142 飲酒の病気 ~命を脅かす一気飲み 長期間は認知症も

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 お酒は楽しみである反面、過度な飲酒は健康に悪影響を与えます。お酒にまつわる病気について説明します。

 急性アルコール中毒は、いわゆる一気飲み(短時間での大量飲酒)で起こります。

急性アルコール中毒

 アルコールは体の中で水分と二酸化炭素に分解され、体外に排せつされますが、分解が追い付かないと血中アルコール濃度が上昇します。濃度の上昇につれて
 ▽反応が鈍くなる
 ▽感情が不安定になる
 ▽千鳥足になる
 ▽会話が不明瞭になる
 ▽低体温、低血糖、けいれんを起こす―と症状が進み、最後には昏睡(こんすい)、呼吸不全となり死に至ります。

 成人の致死量は、100%のアルコールで約300~500㍉㍑といわれています。ビールなら6~10リットル、日本酒やワインなら2~3リットル、焼酎なら1~2リットル程度です。これらを30分間で飲むと、死に至るとされます。

 急性アルコール中毒の治療は、点滴をしながら様子を見ればほとんどのケースで良くなりますが、重症の場合は集中治療室で人工呼吸器や透析が必要になることもあります。

 意識障害がある中で嘔吐(おうと)すると窒息することがあります。屋外で長時間動けなければ、低体温になることもあります。いずれも生命を脅かす危険な状態です。

 小児の急性アルコール中毒は、別の容器に入っていたお酒をジュースと間違って飲んでしまうケースが多いようです。お酒は子どもの手の届かない場所に置いておきましょう。

 子どもはアルコール感受性が高いので、なめたり、一口飲んだりした程度なら様子見でもいいですが、それ以上の場合は念のため受診した方がいいでしょう。嘔吐や興奮状態があればすぐに受診してください。

休肝日をつくる

 長期間の飲酒では、肝障害のほか、ビタミン不足によるかっけや、突然死するアルコール性ケトアシドーシス、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病になりやすくなります。認知症やうつ病の危険も増します。

 厚生労働省が示すお酒の適量は、1日にビール中びん1本、酎ハイは350ミリリットル缶1本、ウイスキーならダブル1杯、日本酒1合程度です。女性や高齢者は、アルコールの分解速度が遅いので、やや少なめがいいようです。

 週2日程度の休肝日もつくってください。ちなみにアルコール依存症の治療は、生涯断酒です。このようなことにならないよう、気を付けたいものです。
(2019年5月18日掲載)


佐藤 貴久=救急科副部長、救急センター科長、四肢外傷・機能再建センター科長、集中治療部科長=専門は救急科
 
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