
長野市の市街地脇を流れる川の岩壁で、営巣中のハヤブサ。私が取材を始めた2013年の前年から8年連続になる。
ハヤブサ科で雌の方がやや大きく、全長40~50センチ。鳥の中では最速で飛ぶと言われ、超スピード、鋭い爪で小鳥を捕食する。中野市や上田市の断崖、松本市街地のビル街で営巣を始めた記録がある国内希少野生動植物種だ。
写真が趣味で、ずっと観察を続けている同市妻科の山崎邦昭さん(80)。つがいはずっと同じか、世代交代したかは不明だが、一帯を生息地とし、今年も3月初旬に交尾、10日ごろから抱卵を始めたという。
巣立ったひなは「当初は2羽。14年は3羽、15年から昨年までは4羽」。同市宮沖の金沢誠さん(69)は、ひなの数のほか、抱卵開始、ふ化、巣立ちのそれぞれの日時を克明に記録している。
山崎さんからハヤブサの様子を聞き、14年から観察、記録を開始。仕事の合間をみて通い続け、足りないところは足しげく通う人たちから取材をした。
一覧表には「ハヤ子」「フサ江」といった愛称や、巣立ち後のひなの動きを図解で詳しく記載している。15年、巣立ち前日に、脚でつかんだ餌を見せつけながら巣の回りを何度も旋回、巣立ちを促す親の姿に感動したという。
ひなは4月下旬ごろにふ化。白い産毛のひなたちや頻繁に餌を運ぶ親の姿を撮ろうと、全国から写真愛好家が訪れる。当初は10人足らずだったが、最近は多い時で30人を超す。昨年はキャンピングカーまで登場した。
抱卵のさなか、巣に近い河川内で4月中旬から、緊急護岸工事が始まり、重機がうなりをあげる。工期は5月末までで、ちょうど子育ての時期と重なる。増えるカメラの放列とともに、繁殖に影響しないか心配だ。
(2019年4月27日掲載)
写真=巣の近くにためておいた餌を運び出すハヤブサ=長野市街地脇の岩壁で4月8日撮影