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2019年春 07 ハルザキヤマガラシ ~河川から高原へ 勢力を拡大

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 菜の花と入れ替わるように、鮮やかな黄色の花が一斉に咲く。春に咲くことから、ハルザキヤマガラシの和名がある。菜の花と同じアブラナ科で高さ20~80センチ。複数に枝分かれし、先端に小さな花から成る球状の塊を幾つも付ける。

 信濃町のしなの鉄道黒姫駅の西南に広がる田園地帯では、5月初めごろから咲き始め、代掻きの盛んな中旬には、あぜ道や用水ののり面など、あちこちで満開、飯縄山や黒姫山山腹の新緑と共演していた。中には、栽培しているかのように畑一面を覆い尽くす光景も。「昔からある。草刈りと一緒に刈り取ってはいるが...」と、畑仕事をしている人たち。

 環境省によると、ヨーロッパからアジア、オーストラリア、北米と世界的に分布。原産地は不明だが、国内には明治期末に渡来。1960年ごろに野生化して、全国に広まったとされる。

 「2000年ころから見掛けた」という千曲川上流域の河川内の群落を取材した2011年、最上流の生育場所は源流に向かう登山口付近にまで達していた。大小の群落は千曲川の流れに沿い、佐久、上田、千曲、長野から飯山の各市で確認できた。1株から4万~11万粒の種ができるといわれ、流水によって運ばれ、湿地を好み、強い繁殖力で拡大するのを実感した。

 分布は河川周辺にとどまらず、高原まで勢力を拡大。同じころから毎年駆除をしている霧ケ峰高原のほか、数年前から奥裾花自然園近く、昨年から今年は美ケ原高原や斑尾高原、飯綱高原など、標高の高い観光地で確認している。

 高山に生育する在来のヤマガラシとの交雑や在来植物との競合が懸念される。国は要注意外来生物(15年に「その他の総合対策外来種」)に指定、動向を注視している。
(「春」シリーズおわり)
(2019年5月25日掲載)

写真=大規模なほ場の真ん中を通る水路ののり面に繁茂したハルザキヤマガラシ(後方は妙高山)=信濃町柏原で5月15日撮影
 
北信濃の動植物