144 下肢静脈瘤 ~伏在型は治療が必要 気付かないまま進行

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 心臓血管外科では、心臓だけでなく、脚の血管の病気も診ています。下肢静脈瘤もその一つです。

 下肢静脈瘤とは、下肢(脚)の静脈の弁が壊れて血液が逆流し、静脈がこぶのように膨らんで変形する疾患です。脚の血液循環が悪くなり、だるさやむくみなどの症状を引き起こします。

 下肢静脈瘤になりやすいのは、まず妊娠・出産した女性。妊娠時に分泌される黄体ホルモンの影響で、静脈瘤になりやすくなります。高齢の人では、静脈の弁の働きが弱くなったり、歩く機会が減ったりして血管に負担がかかると、静脈瘤の原因になります。血縁者に下肢静脈瘤の人がいる場合や、立ち仕事が多い人も、静脈瘤になりやすいとされています。
新しい治療法

 下肢静脈瘤は、大きく4つのタイプに分けられます。このうち治療が必要なのは「伏在型静脈瘤」の場合で、脚がむくむ、脚がだるい、脚の筋肉がつるなどの症状が現れます。この伏在型静脈瘤に対して、長野市民病院では2017年から、新しい治療法「血管内レーザー焼灼(しょうしゃく)術」を行っています。

 この治療法は、局所麻酔をした後、膝の辺りから静脈内にファイバーという細い管を通します。ファイバーからは熱が出るようになっており、その熱で静脈瘤の部分を焼いて閉じてしまうことで、血液が逆流しないようにします。治療は1時間ほどで終わります。

 レーザー焼灼術は、ボールペンの芯ほどの細いファイバーを体に差すだけなので、術後に傷跡が目立ちません。皮膚を切開しないため出血量が少なく、体への負担が少なく済みます。市民病院の場合、入院は2泊3日か1泊2日で、すぐに社会復帰できるのも利点です。

予防のポイント

 下肢静脈瘤は、気が付かないうちに進行していることがあります。脚の表面に静脈が浮かび上がったこぶがあり、脚のむくみやだるさを感じたら、医療機関を受診してください。

 伏在型静脈瘤を予防するポイントを紹介しましょう。まず、長時間立ち続けることを避けましょう。立ち仕事が多い人は、時々は屈伸運動やふくらはぎのマッサージをしてください。就寝時には、布団を重ねるなどして脚を心臓より少し高くすると、静脈の血行が良くなり、むくみの改善につながります。ふくらはぎの筋肉が弱くなると血行が悪くなるので、ウオーキングなどをするのもいいでしょう。
(2019年6月15日掲載)


中原 孝=心臓血管外科副部長、心臓血管センター科長、フットケアセンター科長=専門は心臓血管外科
 
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