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2019年夏 01 ユウシュンラン ~花径1センチ未満 頭をよぎる「絶滅寸前」

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 「ようじの先くらいに、小さいですよ」。10年前、上田市の県希少野生動植物保護監視員からユウシュンランの存在と大きさを聞かされた時のことを、今も思い出す。

 ラン科で高さは10センチほど。茎の上部に数個の白い花を、固まるように付ける。上向きに開く花の径は1センチに満たない。和名は、発見した植物学者の故工藤祐舜(ゆうしゅん)に由来する日本固有種だ。

 県北部のこの場所で、同監視員が確認したのは1998年春。夫婦でスミレ類の写真を撮影していて、偶然見つけた。その前年に発刊された長野県植物誌(信濃毎日新聞社刊)には未確認種とされたが、2002年刊行の県レッドデータブックでは、ここと県南部の2カ所だけに生育する希少種として、絶滅危惧IA類にランク。03年には、県指定希少野生動植物保護条例の指定種となり、採取には届け出が必要になっている。

 10年ぶりに足を運んでみた。生育場所は、標高700メートルほどの道路脇。道路の維持管理のため、山側も谷側も、低木や雑草がきれいに刈り取られ、環境は当時のままだった。

 期待をしながら延長20~30メートルの道路沿いを、記憶を頼りに探してみた。けれども、当時30株近く確認できた姿は、簡単には見つからなかった。

 「見逃してはいないだろうか...」。小さな花の白色を頼りに目を凝らして探すと、谷側の道路脇で枯れ葉の中に点在する7株を、やっと見つけた。もっとあった山側のり面には、わずか2株しかなかった。

 さらに距離、幅を広げて探してみたが、この一帯では発見できなかった。10年の歳月が経過しているものの、極端に環境は変わってはいない。いったい何が原因なのか。

 1桁台の株数に絶滅寸前という言葉が頭をよぎり、最後の姿とならないように―と祈りながら、シャッターを切り現場を後にした。
(2019年6月1日掲載)


写真=高さ10センチほどの茎の先端に小さな白い花を付けたユウシュンラン=県北部で5月中旬撮影
 
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