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2019年夏 09 アサマシジミ ~激減 ― 捕獲規制し保護強化

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 生息場所を明かさないことを条件に、6月下旬、「北信濃の里山を保全活用する会」(飯山市)事務局長の福本匡志さん(53)=中野市=に案内してもらった。梅雨空の曇りだったが、きれいに刈り取られた北信の山地に広がる草地にアサマシジミの雄がいた。

 シジミチョウ科で羽を広げると3~4センチほど。北海道と本州中部に分布し、本州中部の産地は高地帯と低地帯に分かれる。別名ヤリガタケシジミと呼ばれる高地帯型は上高地や八方尾根、戸隠連山、妙高など山岳地帯に生息、食草はイワオウギなど。低地帯型は、長野、群馬、山梨各県を主とする低山帯に生息、食草はマメ科のナンテンハギなどだ。

 産卵は食草の根元でそのまま越冬、春先にふ化する。高地、低地や産地により大きさや翅表(しひょう)の青色の濃淡、模様に微妙な変異があり、一部マニアの採集目的に。「かつては水田のあぜや林道脇に普通にいた」と福本さん。激減した大きな要因は、草原の喪失など生息環境の変化と過度の採集が影響していると指摘する。

 環境省レッドリストで高地型は絶滅危惧Ⅱ類、低地型はIB類。県版では15年の改訂で「著しく減少」を理由にランクを上げ、高地、低地型ともにⅡ類に。また、県は16年、県天然記念物だった高地型と合わせ、低地型を県指定希少野生動植物に加え、捕獲を規制し保護を強化した。

 福本さんは、十数年前に確認したこの生息地を昨年10年ぶりに訪れ、「雌雄4匹を確認。ほっとした」(同会会報「北信濃里山通信」)という。

 しかし、7月初旬、再撮影で訪れたところ、大きな捕虫網を振る中年の男性に遭遇した。草地をまんべんなく歩き、何かを捕獲したのか草むらにしゃがみ込む姿も。疑いたくはないが、「アサマシジミですか?」と言われたことが気にかかっている。
(2019年7月27日掲載)

写真=黒っぽい地に鮮やかな青色が乗ったアサマシジミの雄=北信の山地にある草原で6月下旬撮影
 
北信濃の動植物