記事カテゴリ:

092 岩菅山 奥志賀の深い樹林帯を登る

0706-yamaaru01.jpg
 梅雨のさ中の6月下旬の日曜日、山仲間と2人で志賀高原の岩菅山(いわすげやま・2295メートル)に登った。10年以上前に登ったことがあったが、70歳を過ぎて片道約3時間の上り下りはきつかった。

 岩菅山には長野冬季五輪の際に滑降コースなどの設置が計画されたが、自然保護運動の高まりで立ち消えになった経過がある。スキー場開発が進んだ志賀高原で、今も開発から免れている唯一の山域だ。

 天気がよければ、発哺からゴンドラリフトで東館山の山頂駅まで行き、そこから寺小屋山を経て快適な稜線(りょうせん)歩きが楽しめる東館山コースをたどりたかった。

 だが、予報は午後から雨。稜線はガスで視界が利かないだろうし、降られてもいいように、樹林帯の中を歩く一の瀬コースを往復することにした。

 9時前に一の瀬の登山口に到着。既に道路脇には10台以上駐車している。この時季はネマガリダケのタケノコ採りに、山へ入る人も多い。

0706-yamaaru02.jpg
 前日の雨でぬかるんだ道を少し登ると、「小三郎小屋跡」の道標がある上条用水路に突き当たる。左折して用水路に沿った平たんな道を歩く。途中には、水路の中の岩の割れ目から水が湧き出す「底清水」という場所も。

 武右衛門沢という小さな沢の木橋を渡り、さらに進むと上条用水の取り入れ口となっている水量豊かなアライタ沢に。江戸末期に麓の水田開発のために開削されたこの用水は24キロも続くという。

 快適な散歩道はここまで。この先からいきなり上りに入る。周囲はダケカンバやコメツガの巨木が茂る深い樹林帯だ。急な斜面に丸太の階段が延々と続く。整備した人たちの苦労に頭が下がる。

 時折、タケノコ採りを終え、下ってくる人たちに出会う。皆ずっしりと重いリュックを背負い、さらに体の前に抱え込んでいる人も。

 傾斜が緩やかになると、所々に泥濘地が現れる。靴を突っ込まないように気を配って歩く。「岩菅山中間点」の標識を過ぎると、しばらく尾根道に。ここを登り詰めると、東館山コースとの分岐、ノッキリに出る。

 ここから山頂へは、稜線歩きもつかの間。谷からガスが湧き上がり、急登が続く石ゴロの岩場に。あえぎながら登っていくと、上から20人の団体客が下ってきた。新潟県の小千谷市から来たという中高年の一行だ。

0706-yamaarumap-ol.jpg
 12時過ぎに到達した山頂には、秩父宮殿下登頂記念碑や大きな笠のある石祠(せきし)と岩菅神社の石祠が並んで立つ。晴れていれば360度の眺望というが、周囲は何も見えない。

 板状節理の岩の上で昼食にし、同じコースを下る。途中から小雨になったが、下山するころには上がった。上りに難儀した階段も、下りにはありがたかった。
(横前公行)
(2019年7月6日掲載)

写真上=大きな石祠が立ち並ぶ山頂
写真左=アライタ沢(左)から水を取り入れて流れる上条用水
 
中高年の山ある記