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2019年夏 11 オゼイトトンボ ~ブルーが魅力 ふわりふわり

 飯山市郊外の里山に広がる田園地帯。民家が点在する集落の山際の休耕田にオゼイトトンボはいた。緩やかな段々の休耕田は数枚、ガマやイグサの仲間など水生植物が繁茂し湿地状態。大型のオニヤンマが高速で飛び交う中、か弱い小さなオゼイトトンボが数匹、茎から茎へふわりふわりと飛んでいた。

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 イトトンボ科で全長3~4センチ。和名は最初の発見地尾瀬に由来、山地の池や湖沼など湿地帯に生息する。北海道と本州中部地方以北に分布、長野県が南限とされる。

 1960年ごろの記録は長野市戸隠や大町市、茅野市と少なく、2004年の県版レッドリストの絶滅危惧種ランクはⅡ類。しかし、15年の改訂では「調査が進み確認される生息地が見つかったため」とランクを準絶滅危惧種に下げた。

 改訂時の委員でトンボを担当したのは、日本トンボ学会会員の福本匡志さん(53)=中野市。今回撮影した飯山市の生息地は08年に確認していたが再調査し、黒姫山山麓の信濃町でも見つけた。いずれも複数箇所で確認し、改訂でランクを下げる根拠となった。

 県職の福本さんは、現在、中野市の北信農業改良普及センターに勤務。仕事柄、長年水田と関わり続ける中で、トンボに引かれ、11年同学会会員になった。

 1日には諏訪湖でメガネサナエの羽化殻調査など、県版レッドリストの次回改訂に向けて県内生息トンボのモニタリングを行い、時には希少トンボの生息地の環境整備のため新潟県村上市まで遠征するなど東奔西走の日々が続く。

 「ブルーがきれい」とオゼイトトンボの魅力を話す福本さん。トンボを通し、里山の環境と野生生物の関係を見守っていきたいという。
(2019年8月10日掲載)


写真=マクロ撮影したオゼイトトンボの頭部をさらに拡大すると、前脚で複眼を「クリーニング」している様子が鮮明に見えた=飯山市郊外の休耕田で6月23日撮影
 
北信濃の動植物