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2019年夏 12 ヒメシロチョウ ~真っ白でスマート 弱々しく舞う

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 灼熱の太陽光を浴び、長野市郊外の高原の草むらで真っ白なヒメシロチョウが弱々しく舞う。シロチョウ科の仲間に比べ細身でスマートなことから名があり、飛び方も女性的だ。

 羽を広げると4センチ前後。平地から山地の日当たりの良い草地に生息、食草はツルフジバカマ。成虫は春、夏、秋の年3回発生、さなぎで越冬する。

 科の中には、おなじみのモンシロ(モンキ)チョウや山岳地帯の希少種ミヤマモンキ(ミヤマシロ)チョウ、クモマツマキチョウなど30種ほどが国内にいる。

 本州中部以北、北海道の一部と九州に分布するが、生息地は局所的という。県内では東北信を主に中信から南信にかけて分布、木曽谷にはいないとされる。

 1960年代、中信では諏訪地方から松本、安曇野、大町の一帯、南信でも飯田市、阿智村、伊那市など各地で採集記録がある(「信濃の蝶」Ⅱ、73年、信学会刊)。しかし、70年代になると南信から姿を消し始め、中信へと北上してゆく。

 半世紀を経た現在、「南信では絶滅と見られ、中信でも激減し、ほとんど見かけない」と日本鱗翅学会理事田下昌志さん=長野市。県版レッドリストでは2015年の改訂で「著しく減少」とし、準絶滅危惧種からⅡ類にランクを上げている。

 今回の撮影場所一帯でチョウ類観察を高校生時代から続けている長野市の花崎秀紀さん(67)は、「(ヒメシロは)いつでも見かけ、増えもせず減りもせず」。東信とともに比較的安定しているとされ、生息地の除草が人工的に継続、維持されてきたためと見る。

 しかし、「耕作放棄地が増え続け、周辺の草地環境も喪失し絶滅への道をたどる」。田下さんはヒメシロの今後を憂慮している。
(2019年8月24日掲載))

ツルフジバカマの葉裏に細長い胴を伸ばし産卵するヒメシロチョウ。産む卵は1葉に1卵ずつという=長野市郊外の高原で8月1日撮影
 
北信濃の動植物