
先月、大阪府の百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群が世界文化遺産に登録された。
思い立って前方後円墳が見たくなったが大阪は遠い。似たような古墳が近場にあるか調べたら、うってつけの場所があった。群馬県高崎市にある「保渡田(ほどた)古墳群」だ。
同県は大小合わせて1万3000基もの古墳が確認され、中でも近畿地方のヤマト王権との結びつきを示す前方後円墳が数多くある。4~6世紀に「東国文化」が花開いた地だ。

北陸新幹線で高崎へ。駅西口から循環バス「ぐるりん大八木線」に乗り、井出西バス停で下車。左後方に古墳が見えた。
榛名山麓のすそ野にある保渡田古墳群は三つの前方後円墳がある。いずれもこの地域を治めた王の墓で、八幡塚と二子山の2古墳が1993(平成5)年度の発掘調査後に復元された。
八幡塚古墳は石積みで整備され、5世紀建造当時の雰囲気が楽しめる。墳丘長は96メートル。ちなみに日本一の前方後円墳・仁徳天皇陵は486メートルで約5倍。規模が違いすぎて想像がつかないが、均整のとれた古墳を目の前にして、古代の人の建造技術に感心した。

古墳群の一角には「かみつけの里博物館」があり、発掘物や一帯の歴史資料、再現模型が展示されている。
高崎駅に戻り、次は東口から「ぐるりん岩鼻線」で群馬県立歴史博物館へ。同館は9月1日(日)まで、開館40周年を記念して企画展「集まれ!ぐんまのはにわたち~日本一の埴輪(はにわ)県」を開いている。同県の各市町村にある古墳から出土した、優品の埴輪を展示。王、巫女(みこ)、武人(ぶじん)、馬、動物など116点がテーマごとに展示されている。
どれも初めて見る埴輪ばかりで、表現にそれぞれ意味があり、造形の細やかさに目を見張った。作品をじっと見ていると、1500年前の職人と向かい合っている気持ちが起こる。展示品に添えられた解説が分かりやすく、「埴輪初心者」の自分も、とても楽しめた。
今回の旅で群馬県の歴史の奥深さを垣間見た。書物や資料などで調べ直して、また訪れてみたい。
(森山広之)
(2019年8月10日掲載)

写真=建造当時の姿で復元した八幡塚古墳。晴れた日は後方に榛名山が見える
写真上=群馬県立歴史博物館で開かれている「集まれ!ぐんまのはにわたち」展。県内から集められたえりすぐりの埴輪が並ぶ
写真右=「大刀を持つ女子」(国指定重要文化財)は装飾や化粧、しぐさなどが細かく表現されている