148 女性の大腸がん ~静かに進行 早めに受診を

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 今回は、女性の大腸がんの話です。大腸がんは、女性がかかるがんの割合(罹患率)の2位、女性のがん死亡数では1位です。長野市民病院が2018年に行った約150件の大腸がん手術のうち、半数が女性でした。

 女性の患者さんからは、こんな話がよく聞かれます。「出血があったけれど、痔だと思って様子を見ていた」「便が細くなったり、出が悪くなったりしたけれど、便秘症だと思っていた」「病院に行くのが恥ずかしかった」―。

 日本人の3割は痔にかかっているといわれています。特に女性では、妊娠・出産を契機に発症することがあります。若い頃から便秘症で下剤を定期的に使わないと出ない―という人も多くいます。

気付きにくい病気

 大腸がんは、自覚症状が現れにくい病気です。そのため、痔になった経験があったり、普段から便秘症で便が出にくかったりすると、大腸がんの症状であることに気が付かず、がんが進行している場合があるのです。

 大腸は6つの部分に分けられます。大腸の入り口から順に、(1)盲腸(2)上行結腸(3)横行結腸(4)下行結腸⑤S状結腸⑥直腸―です。

 このうち、おなかの左側にある(4)~(6)の部分にがんができた場合は、出血や便通異常(便が細かったり、詰まったりすること)を自覚して病院を受診する人が多い傾向があります。これに対し、おなかの右側にある(1)~(3)の場合は自覚症状が現れにくいといわれ、便潜血検査などが陰性でも、静かに進行している場合があります。

 早期に見つけるには、大腸がん検診(便潜血検査)だけでは十分とはいえません。受けたことのない人には、内視鏡検査を勧めています。

多くが腹腔鏡で手術

 当院での大腸がんの治療は、開腹手術ではなく、おなかに1センチ程度の穴を数カ所開け、器具を挿入して行う腹腔鏡下大腸切除術が多くなっています。病気の程度により開腹術になることもありますが、昨年は大腸がん手術の78%を腹腔鏡手術で行いました。術後の回復が早く、見た目にも目立ちにくい利点がある手術法です。

 女性にとって恥ずかしい場所であり、家族に話しづらい症状もあると思います。しかし、早期に見つけて治療をするために、「何か変だな」と違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診してください。

林原 香織=外科科長=専門は外科
(2019年8月31日号掲載)
 
知っておきたい医療の知識