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226 関川の関所 ~北国街道の要衝 往時を再現

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 徳川幕府の約260年間、戦争がなかった。世界史年表を見ると、10年から20年刻みで戦争ばかりの時代だ。ヨーロッパでは小国、強国が入り乱れ、貴族、王族の野望が渦巻き、戦国が常態だった。

 戦国時代を勝ち抜き、覇権を握った徳川氏は一族の命脈を万全とするため、300藩を超す大名を参勤交代で縛り、物資や人間の移動を関所と街道で監視した。関所は、「徳川氏による平和」を支えた。

 長野県内で関所が復元、公開されているのは、「福島関所」(木曽町)。中山道の険路とともに往時に思いをはせることができる。「碓氷関所」(群馬県安中市横川)は神社になり、当時の面影はない。

 信越の境、新潟県妙高市にある関川の関所は、北国街道の要であった関所が当時のまま再現され、歴史愛好家や観光客に人気だ。
 長野からは国道18号で、信濃町の野尻湖を過ぎて急坂を下り、スノーシェードのトンネルをくぐって間もなく。「関川の関所」と染め抜かれた旗が林立する旧道を進むと到着だ。

 広々した白州に立つ関所役宅では、当時の格好をした等身大の人形が並んで出迎えてくれる。隣の「道の歴史館」では、江戸時代の人々の旅や大名行列の様子をビジュアルに見せる展示コーナーがあり、見ていて楽しい。「子どもたちに分かるように工夫を凝らしています」と館長の清水正和さん。映像シアターは迫力あふれ、「北国街道 歴史紀行」など見ごたえのあるミニ映画が上映されている。

 江戸中期、関所は全国に53カ所(54カ所の説も)あり、「重き関所」と「軽き関所」に区別された。関川は「重き関所」だった。100万石・加賀藩の参勤交代や、佐渡の金が運ばれる交通の要衝だったためだ。関所村落の中央には本陣を務めた大石家があり、池泉式庭園を無料公開している。

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 関所入り口の関川に架かる巨大な木造橋「長寿橋」も見ものだ。真っ黒な御門の傍らにあるのが「きんさん・ぎんさんの座像」。橋を新たに造り、完成祝いに、佐渡の金にちなんで、長寿のきんさん、ぎんさん姉妹を招いた記念の座像だ。「おさい銭は月に1万円以上あがります」という。

 歴史館の隣にある古民家は「御宿せきがわ」という名のそば店。こしのあるざるそばが一番人気だ。

 関所には抜け道があり、忍び路とか女路(おんなみち)と呼ばれた。村民のサイドビジネスとして、案内料はいい収入になったという。

 9月21日(土)には、第23回関川関所まつりが開かれる。お姫様やよろい姿の家来らによる時代風俗行列や景品の当たる富くじ抽選会などのイベントがにぎやかに行われる。
(2019年8月31日号掲載)

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写真上=復元された関所役宅
写真左=きんさん・ぎんさんの座像
 
足もと歴史散歩