
「長野市郊外の山里の草地に珍しい青いハチがやってくる」。一昨年、希少なチョウの取材中に得ていた情報だが、発生期の8月下旬、久々に足を運ぶと咲き始めた秋の花マツムシソウに蜜を吸いにやってきた。
青いハチはナミルリモンハナバチ。ミツバチ科で大きさは10~14ミリほどで雌の方がやや大きい。国内では本州、九州、四国などに分布するとされるが県内での確認例は少ない。これまで、県版レッドリストには記載されていなかったが、2015年の改訂で「情報不足」としてランクされた。
改訂版巻頭の「カテゴリー変更や新規追加された主な種」の中に写真付きで紹介されている。県内の分布は松本市。特徴として、体が黒色で青緑色の鮮やかな羽毛状の短毛による斑紋があると解説している。
同リスト改訂委員で無脊椎動物専門部会のハチ目を担当した県環境保全研究所(長野市)の(須)(す)(賀)(か)(丈)(たけし)さん(54)=昆虫生態学=は、「研究事例が少なく情報も断片的」という。分布の全体像や増減なども分からず、希少だと思われるが絶滅の恐れがあるかどうかも判断できないとする。
鮮やかな青色は、幸せを運ぶ「青いハチ」(ブルー・ビー)の異名を持つ。九州・阿蘇山系の南にある美術館では、夏の終わりごろになると毎年確認され、一部の昆虫愛好家や写真家、観光客の間では知られた生息地だったという。
ところが、2016年の熊本地震で同美術館も被災。なじみ深いこのハチがTシャツのモデルになり、同美術館や地元自治体の復興にひと役買い、マスコミにも取り上げられ話題になった。
一方で、自分では子育てをしない。ケブカハナバチなどの巣に入り込み産卵、ふ化した幼虫は寄主の餌(花粉)で育つ、「労働寄生」と呼ばれる習性を持つハチでもある。
(2019年10月19日掲載)
写真=マツムシソウにやってきたナミルリモンハナバチ。黒とブルーの斑紋が鮮やかだ=長野市郊外の草地で8月26日撮影