151 脳動脈瘤 ~無症状のまま前兆なく破裂

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 脳の血管の壁は、3枚の膜が重なってできています。このうち真ん中の膜は「中膜」と呼ばれ、血管の強さや弾力を保つのに大切な役割を担っています。

 この中膜が生まれつきもろかったり、高血圧のため中膜に負担がかかったり、喫煙によりニコチンが血管に付着したりすると、もろくなった部分から血管がふくらみ、数年間かけて脳動脈瘤(りゅう)ができます。脳動脈瘤を持っている人の割合は、おおむね成人の5%といわれています。

破裂を防ぐ治療

 ほとんどの脳動脈瘤は無症状です。しかし、風船のように、こぶがふくらむのに伴って血管の壁は薄くなり、限界を超えると破裂することがあります。脳動脈瘤は、脳を包む「くも膜」の下にできるので、破裂するとくも膜下出血になります。死亡率30~50%の恐ろしい病気です。

 破裂は突然起こります。前兆があれば、その時点で治療をすればいいのですが、ほとんどの場合は前兆がありません。破裂率は、特殊なものを除けばおおむね年間0.5~3%です。

 脳動脈瘤がみつかっても、薬でこぶを消すことはできません。自然に消えることもありません。治療は、手術をすることになります。
 手術には開頭術とカテーテル術があります。脳動脈瘤の位置や大きさ、形などから破裂率を推測し、手術に伴う危険性や年齢も考慮して、どの方法が適しているかを判断します。

 脳動脈瘤が小さかったり、破裂率が低い位置にあったりする場合は、治療の必要がないと判断することもあります。その場合も約1年ごとに、MRIなどを使ってこぶの大きさの変化をチェックします。

降圧や禁煙で予防

 脳動脈瘤は発生や破裂の予防が大切です。まずは高血圧にならないことです。高血圧は脳動脈瘤ができる原因の一つで、破裂率もアップさせます。減塩や体重の減量で血圧を下げましょう。

 禁煙も大事です。たばこに含まれるニコチンは血管をもろくし、くも膜下出血の発症率が3倍に跳ね上がるとの報告があります。多量の飲酒もよくありません。1日1合以上は控えるべきでしょう。

 脳ドックを受けるのも良いでしょう。脳動脈瘤は破裂するまで症状がないわけですから、ドックでこぶの有無をチェックすることは非常に有効です。

 冒頭で「血管の中膜が生まれつきもろい場合がある」と述べました。つまり体質です。体質ですから遺伝することがあります。肉親の人に脳動脈瘤があった場合は、検査を強くお勧めします。
(2019年11月9日掲載)


平山  周一=脳神経外科部長、脳血管内治療科科長、脳卒中センター科長=専門は脳神経外科
 
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