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2019年秋 05 ウラギンシジミ&ウラナミシジミ ~共に暖地系 近年生息域広げ

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 長野市若穂綿内のレンコン畑が広がる山際の農耕地。前号で紹介したクズやアレチウリの小群落の日だまりに、小さなシジミチョウ科のチョウがせわしく飛んでいた。

 アレチウリの花で吸蜜するのは、羽を広げると3センチほどのウラナミシジミ。羽の裏が薄い褐色に白色の波状の縞模様が和名の由来だ。

 関東南部の房総半島南端以西、年平均気温が12℃以上の霜が降りない地域に土着する暖地系のチョウ。飛翔力に優れ、春先から繁殖を繰り返しながら北へと移動し分布を広げていく。最北は北海道南部まで達するというが、寒さに遭うと死滅し越冬できない。

 県内での越冬記録はないが、南から移動してきて姿を見せ始めるのは夏の終わりごろで、ピークは9月から10月。大豆やエンドウ、アズキ、ササゲなどマメ科の野菜に産卵、害虫として知られる。

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 「1960年代はわずかだったが、80年以降から年々増え続け、その傾向は今も進行中」と日本鱗翅(りんし)学会理事の田下昌志さん(56)=長野市。近年、裾花川河畔などで多数を見かけるが、餌となるクズの増加、温暖化の影響か越冬地が徐々に北上しているのではと原因を分析する。

 一方、クズの周りを2匹が戯れるように舞うのはウラギンシジミ。羽の裏が銀白色から和名があり、広げた羽は約4センチ。分布域は本州の関東以西、四国、九州とやはり暖地系だ。

 かつて県南部では多く見られ北信ではまれという珍しいチョウだったが、「今年7月クララで幼虫を確認。飯山でもよく見られ、数を増やしているようだ」(北信濃里山通信)。

 ともに、近年生息域を広げているという。
(2019年11月9日掲載)



写真上=クズの葉で休むウラギンシジミの雌。羽の裏は銀白色

写真下=アレチウリの花で吸蜜するウラナミシジミ。羽の裏は波状模様

=いずれも長野市若穂で10月9日撮影
 
北信濃の動植物