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2019年秋 06 マルバフジバカマ ~北米原産の外来種 じわじわ北上

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 昔から温泉が湧き出て、かつては温泉宿もあったという長野市若穂綿内温湯(ぬるゆ)。今も、温泉を自由に持ち帰ることができる「温泉スタンド」があり、市民に親しまれている場所だ。

 スタンドに隣接した民家の山際の林内で、群生する真っ白な花と奥にある小さな祠(ほこら)が目に留まった。民家はかつて温泉宿で、「わたしが嫁にきたころはやってなかった」と山崎和子さん(90)。祠の中には小さな石像が鎮座し、「お薬師様と呼び、温泉の守り神だった」という。

 今でも毎年春になると、お薬師様には集落内の寺のお祭りに合わせ、お供えを奉納し大切に守っている。が、白い花は10年前にはなく、「ここ5、6年前から目立つようになった」。

 白い花はマルバフジバカマでキク科の多年草。フジバカマに似るが、花の形や色が違い、葉が楕円形で丸いことから名がある。高さは約1メートル前後で地下茎は長く横に伸び、茎上部で分岐した先に径1センチほどの小さな白花の塊をいくつも付ける。花期は9月から11月。

 もとは明治中期に日本に移入した北米原産の外来種で、大正初めには神奈川県で定着が確認したとされる。関東周辺に多く、県内では1984(昭和59年)の小諸市での記録(県植物誌資料集)が最も古く、90年代に上田市の岩壁「半過岩鼻(はんがいわばな)」周辺で確認されている。

 その後、2008年には千曲市内で、12年には私も、半過岩鼻の上部にある千曲公園から坂城町にかけて大群を、小群落ながら長野市松代町の大室古墳群などで見かけ確認、撮影している。

 さらに今年10月には、新たにこの温湯と県道長野真田線の松代側の県道沿いで見かけている。生育地の多くは道路沿いの山際で、あまり日照のない陰地でも大群落を形成。爆発的ではないが、じわじわと北上を続けているようだ。
(「秋」シリーズおわり)
(2019年11月16日掲載)

写真=お薬師様の前で群落を形成、白い花を咲かせたマルバフジバカマ=長野市若穂綿内温湯で10月9日撮影
 
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