152 心臓リハビリ ~心疾患を防ぐ特殊なリハビリ

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 「心臓リハビリテーション」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

 心疾患は日本人の死因のうち悪性新生物(がん)に次いで多く、単独の臓器としては最多です。運動不足と食の欧米化による狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の増加、高齢化による心不全の増加などのため、心臓病は今後も増え続けていくと予想されます。心臓リハビリはこのような心臓病の人を主な対象としています。

チームで行う総合治療

 「リハビリ」と聞くと、けがや大病などで体の一部の機能が落ちた際に、その回復のために行うトレーニングをイメージする人が多いでしょう。しかし、心臓リハビリは弱ってしまった心臓を鍛えて心臓の機能回復を目指すものではありません。

 日本心臓リハビリテーション学会のホームページでは、心臓リハビリについて「心臓病を持つ方々の体力や不安・抑うつ状態を改善し、社会復帰を実現し、病気の進行を防ぎ、再発・再入院を減らすことをめざして、運動療法・生活指導・カウンセリングなどをおこなうプログラム」と紹介しています。

 リハビリという言葉から一般的に連想される運動トレーニングだけではなく、▽食事療法▽生活習慣を改善させるための指導▽薬の内服―などの多岐にわたる領域で、医師、看護師、理学療法士、栄養士などさまざまな職種がチームを組んで提供する治療が心臓リハビリです。そして「心疾患の再発予防と健康寿命の延長」という、ほかのリハビリとは少し違ったゴールが目標なのです。

日本でも徐々に普及

 運動療法をするとき、心臓にかかる負担が大き過ぎると心臓病はかえって悪化します。そこでまず、吸った酸素と吐き出した二酸化炭素の量を測定する「心肺運動負荷試験」で患者さん個々に適切で安全な運動の強さを調べます。その上で、ウオーキングや自転車こぎなどの有酸素運動と、低・中強度のレジスタンストレーニング(いわゆる筋トレ)を組み合わせた運動を、外来や自宅で続けてもらいます。運動は週に1回まとめてやるよりも1回15分から40分程度を2日に1回以上行うことで、体への良い作用が途切れずに続くとされます。

 この心臓リハビリ、効果が証明されて欧米では30年以上前から行われています。日本での普及は遅れましたが近年は外来リハビリが可能な施設が増えています。これからますます注目されるでしょう。
(2019年11月30日掲載)


小林  隆洋=診療部循環器内科副部長、心臓血管センター科長、フットケアセンター科長=専門は循環器
 
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