
旭山山麓の、長野県庁の西側を流れる裾花川。緑地公園脇の流れの緩やかな川に冬鳥が飛来し、にぎやかだ。
浅瀬では何種類ものカモたちが藻などの餌をあさる。昨年暮れには、遠く北方から渡ってきたカワアイサ十数羽が飛来。一直線に川面に沿って飛び、水深のある餌場を探しては水中に潜り魚を捕まえる。遊泳したり、岸辺でのんびりと羽を休めたり、群れは正月の三が日を過ぎても確認できた。
カモ科で大きさは65センチほど。雄の頭部は黒緑色、雌は茶褐色で識別でき、くちばしは赤っぽく黒い先端は魚を捕まえやすく鍵形に曲がっている。ユーラシアや北米の大陸で繁殖、冬になると南下し日本にやってくる。九州以北に渡来し、湖沼や河川、海岸などに生息する。

県内では、2000年ごろから諏訪湖で徐々に渡来数が増え、大量のワカサギが捕食され被害が深刻化。04年には千羽、06年には2千羽近くに増えた。「死活問題」と地元の諏訪湖漁業協同組合は爆音機や漁船を使い、追い払い作戦を展開した。
「御神渡り」が確認できるほどに全面結氷すると鳥たちは潜水できず被害は防げる。しかし、地球温暖化の影響か、2010年以降で御神渡りが確認されたのは3回だけ。カワアイサの飛来数は千数百羽前後と減らず、追い払い作戦は続けられてきた。
ところが暖冬の今シーズンは少なく、「400羽もいないのでは。特異的な状況」と、同漁協組合長の武居薫さん(69)は首をかしげる。長い間、諏訪湖の野鳥を観察、記録している日本野鳥の会諏訪支部の林正敏支部長(75)によると、数年前からカワアイサを含む鳥たちは下流の天竜川や上流の上川、蓼科湖などに分散、移動しているという。「追い払いが続き、諏訪湖は住みにくいと学習したのか...」
(2020年1月18日掲載)
写真=潜水能力の高さを示す大きな水かきが特徴のカワアイサの雄=写真上、昨年12月27日撮影。潜水して捕まえた魚をのみ込む雌=同下、1月5日撮影。ともに裾花川で