
善光寺平の東方、山裾に広がる田園地帯に野生メダカの生息地が点在する。長野市若穂綿内の通称「メダカ池」では、暖冬で氷も張らない日だまりの浅瀬でメダカの群れが泳いでいた。
一帯には古くからメダカが生息、地元住民に親しまれてきた。ところが、1985(昭和60)年、高速道建設で生息が危うくなり、地元や綿内小学校、市などが一体となって池を整備し、メダカを残すことに成功した。同小学校では、今でもメダカをはじめとする自然観察学習池として授業で活用し、子どもたちの遊び場にもなっている。
メダカは体長2~4センチほど。別名「ライス(米)フィッシュ」とも呼ばれ、主に水田とつながった池や用水路などに生息、繁殖には水田のような浅くて温かい水域が向いている。北海道を除く全国に分布しキタノメダカとミナミメダカの2系統に分類。県内は紀伊半島から東北地方を結ぶ太平洋側グループのミナミに属し、千曲川や天竜川、犀川水系に生息、木曽川、姫川水系にはいないとされる。
童謡「めだかの学校」で歌われ、身近な観賞魚として親しまれてきた。飼育や繁殖も容易で改良も盛んに行われ販売流通も。飼育系統メダカの安易な放流により交雑が進み、在来の野生メダカの遺伝的健全性が危惧される事態になっている。
県環境保全研究所の北野聡主任研究員(52)=魚類担当=は、2014年、県内の37地点、98個体の野生メダカをDNA解析した。そのうち、非在来の遺伝子を持った個体は10地点(約3割)、19個体(約2割)を占めた。同じ場所で在来と非在来が混在しているケースも数カ所あり、交雑の可能性が高いと推定された。
生息環境の悪化などで絶滅危惧種の野生メダカ。北野さんは県内では在来型が多く残っているとしながら、飼育系統メダカの安易な放流に警告し、交雑が進まない適切な管理の必要性を訴えている。
写真=温まった水面に群れるメダカ。飛び出した目が高い位置にあるように見えることから名が付いた=長野市若穂綿内の「メダカ池」で1月11日撮影