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08 青春スター ~おしゃれなセンス感じ 若者の心情歌う「応援歌」

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 御三家(橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦)のほかにも青春スターはいました。

 その一番人気は「美少年」で売っていた三田明で、デビュー曲「美しい十代」は大ヒットし、御三家に三田を加えた4人組のときは「四天王」と呼ばれていました。三田の人気は御三家に匹敵するほどすごかったのです。

 私も三田が好きで「美しい十代」はよく歌っていました。しかもものまねで。三田の歌い方はブレス(息の吸い方)が独特でした。例えば「白い野ばらを」と歌ってから、ここで息を思い切り吸って「ハアー」と息吸い音が聴こえるように歌うのです。休み時間に友達と「三田明遊び」をやりました。それにしても三田の美少年ぶりは突出していて、世の中にこんなに美しい顔を持つ男がいたのかと信じられないくらいでした。

 三田に続く人気者は、安達明、久保浩あたりでしょうか。安達明は陰のあるちょっと母性本能をくすぐるキャラクターが人気の的でした。「潮風を待つ少女」でデビューして「女学生」でブレークした文字通りの青春スターです。

 ちょっと大人びた久保浩も「霧の中の少女」のヒットで人気がありました。久保は、橋幸夫、三田明と共に、当代随一の人気作曲家・吉田正の門下生として期待され、歌の上手さで売っていました。

 叶修二も忘れられません。「素敵なやつ」でデビューした時「やつ」という言葉に違和感を覚えたものです。「やつ」という言葉を歌詞で使っていいのか、と思ったのでしょう。ちょっとガラッパチなイメージが新鮮でした。

 時は前後しますが、私の中学校、高校時代はまさに新しい音楽が生まれつつあったのか、若い青春スターがたくさん輩出して華々しい音楽状況でした。

 思いつくままに名前をあげていくと、梶光夫の「青春の城下町」、北原謙二の「若いふたり」、松島アキラの「湖愁」など当時好きで歌っていたヒット曲は今でもそらで歌えるほどです。

 女性シンガーもたくさんいました。田代みどりの「パイナップル・プリンセス」、中尾ミエの「可愛いベイビー」、弘田三枝子の「砂に消えた涙」、森山加代子の「月影のナポリ」などは洋楽ポップスの訳詞をした「和製ポップス」で、なぜかおしゃれなセンスを感じたものです。やがてアメリカン・ポップス・ムーブメントの中から日本独自のオリジナル・ポップスが生まれてきました。それが日本の「青春スター」が生まれた背景というわけです。

 女性では弘田三枝子が好きでした。パンチのきいた抜群のボーカル力は言うに及びませんが、はちきれんばかりの明るい笑顔のかわいい彼女に憧れたものです。ちょっぴりセンチメンタルな「砂に消えた涙」も好きですが、彼女らしいパンチのきいた「VACATION」は十代の青春を謳歌する私たちにとっての「応援歌」だったのです。

 それともう1曲、中学3年生の時、キャンプファイヤーで、みんなで歌ったザ・ブロードサイド・フォーの「若者たち」。思春期の期待と不安が入り交じった若者の心情を歌ったこの歌はたくさんの若者たちのハートをとらえたからこそヒットしたのでしょう。「若者たち」はまさに私たちの「青春応援歌」でした。
(2020年2月22日掲載)


写真=キャンプのテントで友達と。左が私
 
富沢一誠さん