
手足を家具にぶつけたり、かゆみのためにかいたりした後、気付いたら紫色の斑点ができていたという経験はありませんか。斑点の部分は、ちょっとした刺激で薄皮がめくれたように剥がれ、痛みと出血を伴います。
この斑点には皮膚の乾燥が関わっています。そして皮膚の乾燥は、私たちヒトの成り立ちと関係があります。
乾燥と闘う皮膚
ヒトは水生生物から進化しました。胎児が母親のおなかの中で羊水に浮いているのは、その名残といわれます。こうした成り立ちから、ヒトは生まれながらに乾燥に傾きやすい性質を持っています。いわば、私たちの体は毎日、乾燥と闘っているわけです。
その闘いに負けないように体の最も外側で守ってくれているのが皮膚です。皮膚には皮脂膜という皮膚の保護機能が備わっています。
皮脂膜は、汗や皮脂が混ざることで効果を発揮します。これが高齢になったり、アトピーやアレルギーにより汗や皮脂の分泌が少なくなったりすると効果が薄れ、体内の水分が蒸発しやすくなります。乾燥すると外からの刺激に弱くなり、少しの刺激でも皮膚の下の毛細血管が破れて内出血を起こします。これが紫色の斑点の正体です。
皮膚の下で内出血が起きているということは、表面の皮膚は内出血で浮いたような状態です。その部分にさらに刺激が加わると、皮膚はむけてしまいます。
皮膚の乾燥はかゆみも引き起こします。かゆくてかくことで皮膚の保護機能が低下し、またかゆくなるという負の連鎖に陥ります。
こまめに保湿を
乾燥による出血やかゆみを防ぐには、皮脂膜を強くする必要があります。そのためには、適切な洗浄と保湿ケアが大切です。
入浴の際はボディーソープやせっけんを手でよく泡立て、手のひらや柔らかいタオルを使って全身をなでるように洗い、20秒ほどおいてから流せば汚れは落ちるといわれています。たわしやあか擦りでこすると爽快感は得られますが、こすることで皮膚の保護機能が低下し、入浴後は急速に皮膚が乾燥していきます。
入浴後は、全身の水分が湯気と共に一気に抜けていきますので、できれば15分以内に全身に保湿剤を塗ることが推奨されています。
保湿剤は市販されている物で構いません。量を多く塗るより、頻繁に塗ることを重視してください。
傷になってから対処するのではなく、傷にならないよう毎日ケアをする意識が大切です。体を一番外側で守ってくれている皮膚をいたわってあげてください。
須野原 祐一/看護部(褥)(じょく)(瘡)(そう)管理看護主任、皮膚・排泄ケア認定看護師
(2020年2月15日掲載)