
カワアイサ(1月18日号掲載)が居た県庁西の裾花川で、小さくて地味で目立たないカワガラスが小石の上を拠点に川面を行ったり来たりして水中に潜っては餌をあさる。「一年中見かける」と、ここで野鳥撮影を続け4シーズン目の中村達也さん(67)=松岡=は言う。
カワガラス科で全長20センチほど。カラスの仲間ではない。留鳥で全国の河川の上流から中流域、渓流、沢などの岩や石が多い場所に生息する。黒褐色の羽は雌雄同色。食べ物は、水中のカワゲラやトビゲラなどの水生昆虫のほか、カニ、クモ、時には魚なども。小さな体ながら、結構急な流れの中に飛び込むが流されない。潜水時間は一瞬から10秒ぐらいと短く、同じ石の上に戻って何度も繰り返す。
水鳥のように水かきはないが、水中を飛ぶように泳ぎ、"潜水名人"の異名を持つ。肉厚で滑りにくい脚の裏で水底を歩くように餌を探す(「鳥の生態図鑑」)。潜水が多い割に羽に水滴がつかない。その秘密は密生した羽毛にあり、尾部にある脂腺から出る油を常にくちばしで羽に塗り付け油膜で覆うためという。

鳥の中では繁殖時期が早く2月ころ営巣に入る。外敵にやられない滝の裏などに横向きの巣を作り、4~5個を産卵。ほかの鳥より長めの22日間ほどで巣立ち、ひなはすぐ自力で餌を取り始める。
少し古くなるが1976(昭和51)年出版の「続・野鳥の生活」で、執筆者の一人で、カワガラス2巣の生活を克明に観察した腰原正己さんが「1巣はカラスに襲撃され、別の巣は大量の赤いダニがたかったひなを親が運び出し捨てた」と厳しい現実を記録している。
裾花川では1月上旬まで3羽がそろって見られたが、中旬以降は子育てが始まったのだろうか単独が多い。春先、元気なひなを連れた一家に出合えるのを楽しみにしている。
(2020年2月1日掲載)
写真=餌をあさり水中から姿を現したカワガラス(上・1月5日撮影)。眼球を保護する瞬膜が白色のため、まばたきをすると目が白くみえる(下・3日撮影)=共に裾花川で