
最近は群馬県を訪れることが多い。長野市から北陸新幹線や上信越道でアクセスしやすいのが理由だ。今回は上信電鉄に乗って旅をした。
同線は高崎駅から南東へ延び、世界文化遺産の富岡製糸場がある富岡市を通って下仁田町まで続くローカル線だ。名前に「信」が付くのは、碓氷峠のように上信国境を越え、小海線の羽黒駅まで延ばす構想があったからだ。
列車は高崎市街地を出て烏川を渡り、低い山並みを両側に見ながら鏑(かぶら)川と並行して走る。のどかな田園と古い家並み、新しい住宅地が交互に現れる。
まずは群馬県立自然史博物館の最寄り駅・上州一ノ宮へ。目的地への公共交通機関は登録制のオンデマンドバスのみという。仕方なく博物館まで片道2キロを歩いた。
同館は地球の誕生から群馬県の現在に至るまで数多くの標本を展示。中でも実物大の恐竜模型や骨格が何体も並ぶ様子は圧巻だ。

やや時間をロスしてしまったが、次は以前から気になっていた「こんにゃくパーク」へ。同電鉄では、一部の有人駅で自転車の貸し出しがある。上州福島駅で自転車を借りて、1・5キロほど緩やかな坂道を上る。上信越道のすぐ脇に、テーマパークのようなカラフルな建物を見つけた。
広い駐車場には自家用車や観光バスが並んでいる。こんにゃく加工工場に併設した同施設では試食バイキングがあり、お昼時とあって大勢の人が何種類ものこんにゃく料理を楽しんでいた。
道路の案内標識を見ると、1・5キロほど南に城下町があるという。興味が湧いたのでさらに先へ進んだ。しばらく坂道を上ると、品のある商家と桜並木が現れた。道端の案内板を読むと「織田家」の文字が。さらに読み進めると、ここは織田信長の次男・信雄(のぶかつ)から、代々同家が治めた小幡(おばた)藩の城下町―とある。城はなく、三代信久(のぶひさ)がこの地に陣屋を置いた。

周辺は武家屋敷や石垣など江戸時代の風情が残り、落ち着いたたたずまいだ。藩邸跡の南には、信雄が造園した大名庭園・楽山(らくさん)園がある。空が広く開放的で、穏やかな気持ちになる場所だ。4月5日(日)には同地区で「さくら祭り」があり、武者行列も行われる。
再び電車に乗り、終点の下仁田へ。同町は地質観察が楽しめるジオパークが各所にある。時間がないので、鏑川べりにある、日本列島を横切る断層・中央構造線の露頭「川井の断層」のみ観察した。
今回は駅からの公共交通機関が皆無で、自転車か徒歩のみ。見どころは多いが体力がいる旅だった。
(森山広之)

(2020年2月8日掲載)
写真上=大名庭園「楽山園」。遠くに榛名山系が見える
写真中=「こんにゃくパーク」の入り口
写真下=小幡藩の商家と桜並木