157 腎臓 ~全身の健康を保つ重要な働き

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 「肝腎(心)要」というように、昔から心臓、肝臓、腎臓は重要な臓器と考えられています。今回はこのうち腎臓の大切さを紹介しましょう。

生命維持に不可欠
 息をすること、食べること、用を足すこと―どれも全ての人が当たり前に行う、生きていくのに必要な行為です。重い病気の患者さんには、人工呼吸器や胃ろうといった体の外から直接栄養を入れる通り道を作るのと同時に、腎臓に尿を排出するための管「腎ろう」を付けることがあります。尿を排出することは、生命の維持に欠かせないからです。

 腎臓の働きは、尿を作ることです。尿を作ることで、体の水分やミネラルのバランスをとり、体内の老廃物や過剰なものを排せつしています。

 腎臓がきちんと働かなくなると、体がむくみやすく、疲れやすくなり、食欲不振になります。体に水がたまると、むくみだけでなく、胸水や腹水のように体の内側にも水がたまり、肺や心臓、ほかのいろいろな臓器に負担をかけることになります。ミネラルバランスが悪化すると、筋肉が震えたり、脱力したりすることもあります。

悪化で多くの弊害
 医師に「腎臓が弱っていますよ」と言われても、「腎臓は2つあるから大丈夫」と考えている人がいるかもしれません。確かに、腎臓が弱っていても、すぐに日常生活に多くの問題が出るわけではありません。自覚症状がないため様子見の人は少なくないでしょう。

 ただ、注意は必要です。腎臓が弱り続けると、食事や薬では体の水分やミネラルのバランスを調節できなくなり、最終的に人工透析が必要になります。

 造影検査ができない場合もあります。腎臓の機能をさらに悪くさせる可能性があるからです。腎臓が悪い患者さんには強い薬が使えません。飲み薬も点滴も、腎臓の働きで尿として排出されるからです。

 検査をしたいけれど、腎臓が弱いからできない。肺炎で抗生剤が必要だけれど、量を加減しなければならない。がん治療をしたいけれど、腎臓が悪いために抗がん剤が使えない...腎臓が弱っていると、このようにほかの病気の治療に支障をきたす場合が多いのです。

 年齢を重ねるにつれ、誰でも腎臓の機能は落ちてきますが、健康な生活を送るには、腎臓の機能をできる限り保つことが大切です。腎臓に負担をかける塩分の摂取を減らすために、まずは食生活の改善を始めましょう。

松高 淳/泌尿器科医師=専門は泌尿器科一般

(2020年2月29日掲載)
 
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