
快晴無風だった彼岸過ぎの平日、山仲間と2人で越後の名峰・米山(993メートル)に登った。海岸線からせり上がる秀麗な姿は民謡に(唄)(うた)われ、山頂には日本三大薬師の米山薬師堂がある。
7時に長野市内を出発。上信越道を新潟へ向かう途中、雪の黒姫山や妙高山に目を奪われる。上越高田インターで降り、頸城(くびき)平野の真っただ中を走る。
国道8号線に出て、上越市柿崎区の交差点を右折して登山口へ。ところが、目当ての交差点が分からず、柏崎市まで行ってしまう。行き過ぎたためUターン。柿崎のコンビニで道を聞き、なお右往左往しながら10時ごろ目的地の水野集落に。

山奥の20戸ほどは、ほとんどが廃屋だ。ここから林道を上り、終点が最短路「水野林道コース」の登山口だ。10台ほどの駐車スペースに、芝生の展望広場まである。
西側が大きく開け、素晴らしい眺めだ。正面に白銀の頸城山群が連なり、妙高山、火打山、焼山の姿が。その右に青田南葉山などが続き、最後は日本海に落ち込んでいる。仕事で来ていた営林署員たちも見入っていた。
10時過ぎにようやくスタート。いきなり階段状の急登が続く。あえぎながら登ると、道脇につぼみを付けたカタクリが。直径10センチ以上ある赤茶色の葉のオオイワカガミが至る所に密生している。花が咲けば見事だろう。

その先のブナの原生林「やくしの杜(もり)」を抜けると、下牧コースと合流する分岐に。少し登ると、避難小屋が。薄暗い小屋の中で一息入れる。
ここからはいったん下り、両側が切れ落ちたやせ尾根に。片側に何本もポールが打ち込んであるが、冬場は鎖が外されている。
この辺りから上部は、くるぶしほどの深さの雪道に。いつもの軽登山靴でなく、革の登山靴を履いてきてよかった。登るにつれ、雪の中から出ている灌木(かんぼく)類が邪魔になる。油断すると、跳ねた枝が顔に当たる。
正午前に山頂に到着。2階建ての立派な避難小屋の脇を抜けると、石段の上に米山薬師堂が。北側には、日本海が広がる。直江津港の石油タンクや柏崎の原子力発電所、遠く佐渡島も見える。
南西に、登山口で見た頸城山群。南東には、苗場山から八海山、越後駒ケ岳、中ノ岳の越後三山。さらに白銀の飯豊(いいで)連峰や朝日連峰が連なる。北アルプスに匹敵するスケールだ。

薬師堂の前で昼食を取り、同じ道を下ろうとしたのに、なぜか大平コースに入ってしまった。30分ほど下って間違いに気づき、再びやぶに悩みながら頂上まで登り返す。
往復1時間のロスタイムを経て、水野林道コースの下山口へ。よく見ると、芝生広場にはフキノトウが密生している。採り放題採って自宅への土産にした。
(横前公行)
(2020年4月11日掲載)
写真上=登山口から望む頸城山群の山々。左から妙高山、火打山、焼山
写真中=山頂から望む越後三山など上越国境の山々
写真下=山頂から眼下に望む日本海。中央奥には佐渡島