160 喉頭がん ~放射線療法 単独や抗がん剤併用で

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 「声がかれているけれど、風邪でもひいたかな」と思っていたが、時間がたっても声がれが治らない―たばこを吸う人の場合には、「喉頭がん」が原因であるかもしれません。


喫煙男性が多数
 喉頭とは、いわゆる「のど仏」を含んだ臓器で、ここには声帯があります。喉頭は空気の通り道であるのと同時に、声を出す役割を担っています。

 喉頭がんは、故忌野清志郎さん、故立川談志さん、つんく♂さんらの著名人もかかった病気です。罹患(りかん)率は日本人10万人当たり約3人で、全てのがんの0・6%に当たります。男女比は10対1で男性が多く、患者の圧倒的多数が喫煙者です。

 喉頭がんの代表的な症状は、声がれとのどの違和感です。喉頭にできるがんのうち、声帯にがんが発生した場合(声門部がん)には、早い時期から声がれが現れるため早期発見につながりやすいです。

 一方、声帯の上下にできた場合(声門上部がん・声門下部がん)には、病気が進み、病変が声帯まで及んだところでようやく声がれが出現します。進行すると血痰(けったん)、呼吸困難が起きることもあります。


利点のある放射線療法
 がんと診断されると、さまざまな検査を行って病期(ステージ)を決定し、それに基づいて治療方針を決めます。

 喉頭がんでは、ステージ1であれば放射線療法を単独で行います。声門部がんの80~95%、声門上部がんの70~80%の患者で改善します。放射線療法は、摘出手術などと違って声帯を温存でき、発声機能を保てる点が大きなメリットです。

 ステージ3~4といった進行した喉頭がんに対しても、抗がん剤と併用した「化学放射線療法」が行われることが多くなっています。手術の後にも、再発の危険性が高いと判断された場合に術後放射線療法が行われることがあります。

 喉頭がんに対する放射線治療の回数は30~35回が一般的で、治療期間は7週間前後です。治療中の副作用として、声がれの悪化と飲み込む時のつかえ感や痛み、皮膚炎が多く現れます。

 声がれの悪化は、放射線による声帯の炎症で生じます。放射線療法中に起きる声がれの悪化ががん病変が増大したためであることはまれで、むしろがん病変は小さくなっていることが多いです。放射線療法中に現れたこうした副作用は、いずれも治療終了後1~2カ月で徐々に改善します。

 喉頭がんは、早期に見つかり、治療しやすい場合が多い疾患です。たばこを吸う人で、声がれが長引くようなら、耳鼻咽喉科を受診してください。

松下 大秀=放射線治療科科長、がんセンター放射線治療センター科長=専門は放射線治療

(2020年4月25日掲載)
 
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