
ダンコウバイ(4月4日付掲載)を撮影した長野市若槻の里山を、4月7日再訪すると、木々の芽吹きが始まった林内で淡い紅色をした小さな花がひっそりと咲いていた。スイカズラ科の「ミヤマウグイスカグラ」。和名は文字通り、鳴き声で春を告げるウグイスが鳴き始める頃に咲くことに由来し、別名「ウグイスノキ」とも呼ばれる。
科名から「ウグイスカズラ」と間違いやすいが、枝はつる状に伸びず「葛(カズラ)」ではない。「カグラ」はウグイスが隠れるほど小枝が多く茂り、「ウグイスカクレ」がいつしか転じて「ウグイスカグラ」になったという説(「植物名の由来」・東京書籍)や、ウグイスのような小鳥がよく集まる「狩座」(新分類牧野日本植物図鑑)から―など諸説ある。
本州、四国、九州の山地に産し日本固有。幹に細い枝が多い高さ1~3メートルの落葉低木で、4月ころ長さ1センチほどの小さな花を葉より早く、もしくは同時に付ける。漏斗(ろうと)状の花が垂れ下がり、先端は5裂、初夏、グミに似た赤い実に。渋味や酸味がなく、ほんのり甘い味は子どもたちに人気という。
同じ仲間にヤマウグイスカグラ、ウグイスカグラがあり、「長野県植物誌」(信濃毎日新聞社)では、ヤマウグイスカグラを筆頭に、変種としてウグイスカグラ、ミヤマウグイスカグラを挙げている。枝、花柄、葉に毛が散生するのがヤマウグイスカグラ、若枝、花柄、葉柄に腺毛が多いのがミヤマウグイスカグラで、ウグイスカグラは葉脈上には毛があるが、茎や花は無毛と解説している。
宇都宮貞子さん著「春の草木」では、「ミヤマウグイスカグラは実にまで毛があるが、ウグイスカグラは無毛、ヤマウグイスカグラは葉にだけ疎毛があるという。信州北部にはミヤマが多い」としている。
(2020年4月18日掲載)
写真=2個ずつ垂れ下がった淡い紅色の花を咲かせるミヤマウグイスカグラ。葉や花柄などに腺毛が確認できた=長野市若槻で4月7日撮影