記事カテゴリ:

2020年春 06 チョウゲンボウ ~営巣に受難 中野市の十三崖

0516-doushoku.jpg
 中野市の市庁舎近くの施設の高所に、市の鳥チョウゲンボウの子育て用巣箱がある。チョウゲンボウは、約20年前から旧市庁舎に毎年営巣するようになり、その子育ての様子はライブカメラを通して市ホームページで公開され、市民にも親しまれてきた。しかし、新庁舎の開庁(2018年2月)と、旧庁舎取り壊しに伴い、営巣場所が失われたため、市が設置した巣箱だ。

 18年は早速ペアが巣箱を利用したが、ふ化には至らなかった。昨年は利用がなく、今年は3月中旬ころからペアが姿を見せていた。

 4月末、市の許可を得てペアをカメラで観察した。一羽(雄)が餌の捕獲のため外に出ている間(長いときで2時間を超えることも)、足環が着いている残りの一羽(雌)はずっと巣箱にいた。一羽がネズミや小鳥といった餌を運んでくると、巣箱にいた一羽は餌を受け取ると巣箱から離れた場所で餌を食べ、戻るまでの間は残りの一羽が巣箱にいた。

 学生時代からチョウゲンボウを研究し、その生態に詳しい市文化財係の学芸員本村健さん(52)にペアの様子を伝えると、「抱卵は間違いない」。

 中野市には、チョウゲンボウの集団営巣地として国の天然記念物に指定されている十三崖(じゅうさんがけ)があり、かつて年間20以上のペアが集団営巣した。しかし徐々に数が減ったため、市は05年、繁茂する樹木の除去、崩落する巣穴の整備や増設など保護回復事業に乗り出した。

 その成果が表れ、10年には12年ぶりに5巣を確認。回復の兆しが見えたかに思われたが、同時期にハヤブサが崖にすみ着き、弱いチョウゲンボウを攻撃したり、巣穴を物色したり。13、14年は繁殖ゼロに。15年以降、持ち直したものの、昨年まで唯一の営巣場所が乗っ取られ、今年は再びゼロになった。

 「巣箱の卵は何とかふ化してほしい」。本村さんは、ひなが無事巣立ち、十三崖が再びにぎやかになることを期待している。

写真=雄(奥)が運んできた餌の小鳥をくわえて飛び立つ雌。大きさはハトぐらい=中野市内で4月25日撮影
 
北信濃の動植物