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2020年春 07 ヤマセミ ~きれいな白黒の鹿の子模様

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 「来ましたよ」。4月中旬、北信の千曲川支流の川べりで、筆者含め4人ほどが構えるカメラの前に、ヤマセミがさっそうと現れ、枯れ枝に止まった。すぐに、近くの高架橋下部のへりに移動。クイッ、クイッと頭部を動かしながら、真下に広がる川の中の獲物を物色しだした。

 お目当ての魚を定めると20メートル近くの高さから垂直に勢いよく水中に飛び込む。捕獲に成功すると、魚をくわえたまま岸辺の木に。いったん見失ったが、再び飛来すると同じようにダイビング。今度は一瞬途中でホバリングし、水中に飛び込んだ。が、失敗したのか収穫なしで千曲川本流方向へ飛び去った。

 昨年本紙(1月19日号)で紹介したカワセミと同じカワセミ科。「青い宝石」ともいわれるカラフルなカワセミとは異なり、羽は白と黒のツートンカラー。全長40センチ前後とハトよりひと回り大きい。カワセミと同じく、水面近くを川筋に沿って飛ぶ雄姿は多くの野鳥ファン憧れの鳥だ。

 北海道から九州に至る全国の渓流や里を流れる河川の中流域に生息、繁殖する留鳥。筆者が2008年ころ撮影したのも善光寺平の千曲川本流の川岸で、水流で土が削られてできた絶壁に横穴を開け、子育てしていた。案内してくれた須坂市の男性によると「橋と橋の間に一つがいはいる」。

空高く飛ぶことはなく、一般的に目にする機会は極端に少ない。筆者もほかに遭遇したのは犀川の小田切ダム河畔、伊那市高遠の三峰川と数少ない。

 2015年改訂の県版レッドリストでは、「一部地域で個体数が減少」と、ランクをⅡ類に上げている。この場所にヤマセミ撮影が目的でよく訪れるという近くの男性(88)は「昨年の台風のせいか、先シーズンより出没頻度が少ない。つがいの姿も見えない」と寂しげに話した。   
(春シリーズおわり)
(2020年5月23日掲載)

写真=高さ約20メートルの高架橋下からダイビングするヤマセミ。白黒の鹿(か)の子模様がきれいだ=北信の千曲川支流で4月中旬撮影
 
北信濃の動植物