05 「罰金」の功罪 ~自発的な心理に影響も

0627-seikatu.jpg
 増え続ける共働き家庭は1997年に専業主婦の世帯数を上回り、現在ではその2倍になりました。この変化は、地域コミュニティーにも影響を与えています。

 例えばPTAの役割分担で、専業主婦の保護者とフルタイムで働く保護者の間に溝が生まれる学校もあります。また町内会での掃除など、地域の共同作業で不公平が生じることもあるようです。皆さんも忙しさのあまり、他の人に仕事を任せきりにしてしまった経験があるのでは?

 そんな時に申し訳ないという、ある種の罪悪感が湧いてくるのは自然なことです。

 ところが、こういった罪悪感を抱く心理を失わせてしまう方法があるのです。それは「罰金」を科すことです。経済学者のウリ・ニーズィーとアルド・ルスティキーニは、これを証明する実験を行いました。

 イスラエルの保育園でのことです。子どものお迎えに遅れて、迷惑をかける親が何人かいました。そこで「遅刻をした保護者は罰金を払う」というルールをつくったのです。結果は予想に反して、遅刻する親が増えてしまいました。しかも後に罰金制度をなくしても、遅刻は増えたままだったのです。

 この理由は、遅刻した親が「お金を払ったのだから保育時間を延長してくれてもいいはず」と勝手に決めつけたことでした。罰金導入前にあったはずの、極力遅れまいとした「自発的に努力する気持ち」が、外部から与えられた「罰金制度」によりなくなってしまったのです。

 このように内面からの動機が、外からの影響で失われることを行動経済学では「クラウディングアウト」(締め出しの意味)と呼びます。良い行動が自発的に行われるものと、いつも期待できるわけではありません。かといって人を誘導するために、お金で釣ってもうまくいくとは限りません。

 これは仕事場、学校、家庭など、人が関わる多くの場面に当てはまります。お金が人の心理に与える影響を軽視せず、細心の注意を払うべきです。
(マーケティングコンサルタント)
(2020年6月27日掲載)