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105 虚空蔵山 ~四賀のマッターホルン

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 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されるのを待って、2カ月ぶりに山に出かけた。目的地は松本市四賀(旧四賀村)の虚空蔵山(こくぞうさん)(1139メートル)。長野道を松本方面から長野へ向かう時、明科トンネルを抜けて間もなく右手に見えてくる小さな三角形の山だ。

 姿かたちの良さから山麓の善光寺街道会田宿にちなんで、地元では「会田富士」と呼ぶ。山好きの間には「四賀のマッターホルン」の愛称もある。

 山仲間と2人で8時に長野市内を出発。長野道を麻績インターで降り、筑北村から旧四賀村へ。登山口への行き方が分からないため、四賀化石館まで行って地図をもらい、道を教えてもらう。

 探し当てた山の中の立派な野球場近くの空き地に車を置く。ナイター照明はむろん、内野スタンドがあり、外野には緑が鮮やかな芝まで張られている。これならプロ野球も呼べそうだ。

 ここから舗装された広い林道を50分ほど歩く。途中、路上でヘビの死骸を2匹見た。アスファルトの上で日なたぼっこをしていて軽トラックにひかれたようだ。これはヘビが多いぞと胸騒ぎがしたが、その後は生きた姿も見ることはなかった。

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 水場のある岩屋社コースの登山口で一休み。一帯の山城跡の説明板の脇に竹の杖が何本も用意されている。正面の鳥居から上部へ直登する石段の参道が延びる。左手に緩やかな巻き道があるが、迷わず急傾斜の参道を登る。

 一汗かいたところで、大きな岩穴の中にはめ込まれたように立つ木造の岩屋社が現れた。扉を開けて中をのぞくと虚空蔵菩薩が祭られている。手前の岩場には3体の摩崖仏(まがいぶつ)が彫り込まれている。ここも信仰の山なのだ。

 岩屋社の脇で巻き道と合流。広くなった登山道を登って行くと稜線に達し、岩井堂からコースと一緒になる。ほどなく山頂だ。一帯では赤松が松くい虫被害にあい、無残な姿をさらしている。だが、手前の立派な赤松だけは緑の葉を蓄えていた。足元には青く小さなフデリンドウの花も。

 「虚空蔵山城跡」の石碑が立つ小広い頂上で、周囲の山々を眺めながら昼食に。北に筑北村や麻績村、聖山を望み、西には北アルプスの山並みが続く。南は四賀の盆地を見下ろす。

 下山は岩井堂へのコースをたどる。岩屋社コースとの分岐からわずか下ると、ゴジラの背のようなゴツゴツした岩尾根に。右側に脇道もあるが、眺めのよい尾根上を慎重に進む。

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 そこから下は、よく整備された快適な登山道だ。途中には空堀跡や立派な石の祠(ほこら)も。山中のあちこちに戦国時代の山城の遺構がある。沿道には至る所に「キノコ止め山」の張り紙が。松くい虫被害がこれだけ進んでも、マツタケは採れるのだろうか。
(横前公行)
(2020年6月13日掲載)


写真上=ゴジラの背中のような岩尾根を歩く

写真下=岩穴に張り付くように築かれた岩屋社
 
中高年の山ある記