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2020年春 05 ヤナギ ~災害跡の河川敷に春の芽吹き

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 千曲川の河川敷は、昨年秋の台風19号で大量の濁流に見舞われたが、春の訪れとともに、樹木ヤナギが災害を乗り越えて芽吹いている。色は種類によるものだろうか、黄色みの濃いもの、黄緑色、緑っぽいものと微妙に違う。

 ヤナギは北半球の温帯から亜熱帯に分布し、湿った場所を好む落葉高低木。「ヤナギハンドブック」(文一総合出版)によると、ヤナギ属として世界に約450種、日本には30種、5亜種、2変種ある。

 県内にもほぼ同数の種が生育する(信濃毎日新聞社「県植物誌」)。全県の河畔や川筋、湿地帯にはカワヤナギをはじめコゴメヤナギ、ネコヤナギ、丘陵から山地にはオオネコヤナギ、バッコヤナギ、亜高山帯にはミネヤナギ、北ア、八ケ岳、南アなどの高標高地にはレンゲイワヤナギが分布している。

 中信の上高地から松本市波田にかけての梓川ではケショウヤナギが有名だ。北信はキツネヤナギ、シライヤナギなど、東信、南信それぞれの地域限定の種もある。

 万葉集に登場するなど古来より親しまれてきた植物で、長野市内にも柳町や柳原、三本柳などヤナギに由来した地名がいくつもある。

 昭和初頭から40年代にかけて、中野市を中心に作られていた伝統工芸品「杞柳細工」の原材料は朝鮮半島原産のコリヤナギ。種は不明だが、筆者の出身地の松本の小正月行事「三九郎」(どんど焼き)では、ヤナギの枝に繭玉を差す。今でも、正月になるとスーパーや量販店の店頭にヤナギの枝が大量に並ぶ。

 2004年6月、長野市綱島の犀川河川敷のヤナギ林に樹液を求めてやってきたたくさんのカブトムシを採集しようと多くの人が集まり、話題になったことも。このほか、樹林はチョウのコムラサキの、川筋のヤナギの根の部分は魚類や水生昆虫の格好の生息場所となっている。

写真=夕暮れの斜光に映えるヤナギの大木(種は不明)。台風の大水にも流されずに芽吹いた=屋島橋の上流側の千曲川河川敷(長野市)で3月20日撮影
 
北信濃の動植物