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01 門前レア神社詣で ~受け継がれる多様な信仰

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 見慣れた町も意外と知らないことばかり―。長野市中心市街地活性化協議会が月2回開き、毎回異なる案内人が独自の視点でまち歩きの楽しさを伝える「ながの門前まちあるき」は、善光寺界隈の町の魅力を再発見するイベント。記者が「まちあるき」に同行取材し、見て、聞いて、感じたことを連載(月1回)で紹介する。

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 6月19日のテーマは「門前レア神社詣で」。案内人は弥栄神社(上西之門町)や湯福神社(箱清水)など21社の宮司を務める斎藤安彦さん。先祖は少なくとも450年前から長野にいて神に仕える職につき、自身は民俗学にも詳しい。その斎藤さんが、一般にあまり知られていない神社を案内するというのが今回の企画だ。

 楽茶れんが館(大門町)での出発式で、「長野は寺町だが、神社もかなり多い」と斎藤さん。なぜ神社が多いのか、その謎を歩いて確かめていくことにする。

 初めに訪れたのは、中央通り沿いの長野信用金庫大門町支店北隣にある「熊野神社」。ここは、西から東へ流れる鐘鋳川(現在は暗渠)のほとりで、善光寺町の南からの入り口。大門の人々は町の守護神に、商売繁盛の利益があると伝わる熊野の神を、紀州から勧請したという。

 参拝後、中央通りをさらに南へ。北野文芸座の隣にある「道祖神社」は、上後町の商売繁盛の神。幅60センチほどの小さな木のほこらで、「宗教法人格を持つ、長野で一番小さな神社」という。

 次は中央通りを西に入り、長門町の長野天神社へ。天神社は近くに8社ほどあるという。その理由は斎藤さんいわく「商家が多いから」。昔、商家の旦那は住み込みの小僧を一人前にするために、寺子屋へ通わせて読み書きそろばんや礼儀作法を学ばせた。寺子屋が多いから、学問の神・天神も多くまつられるという。

 国道406号を渡り、北へ。西之門よしのやの南の通り「阿弥陀院小路」には、民家のれんが塀の一部に、小さな三峯(みつみね)神社が。三峯は災難よけの神で、ここは栄町の祭神。北側へ回り込んで「よしのや」の駐車場の片隅には、西之門町の三峯神社がまつられていた。

 「神様には商売繁盛、災難よけ、学問成就...とそれぞれの得意分野があり、神社を見れば、その町の特徴が分かる。小さな神社から、各町が持つ生活文化に気付いてほしい」と斎藤さん。小さなレア神社から、門前で暮らす人々の生活と、受け継がれてきた多様な信仰を知るまち歩きだった。
(竹内大介)
(2020年7月11日掲載)