
梅雨の晴れ間を狙って6月中旬の平日、富士見町と伊那市境の入笠山(にゅうかさやま=1955メートル)に出かけた。山頂からの360度の眺望と入笠湿原のスズランが目当てだったが、あいにくの雨で頂上は視界ゼロ。花だけは楽しめた。
70代の山仲間3人で7時に長野市内を出発。天気予報は晴れのはずだったのに、長野道から中央道に入り、諏訪湖を過ぎる辺りから雨が当たってきた。
諏訪南インターで降り、国道20号を山梨方面に進み、右折して沢入登山口に向かう。その先も舗装された車道が麓まで通じているが、マイカー規制で一般車の通行はここまで。夏も営業している富士見パノラマスキー場のゴンドラを利用させたがっているようだ。

到着する頃には本降りとなり、雨具を着て9時半に登り始める。沢入登山口から入笠湿原までは約1時間。カラマツ林の中に木製階段が整備されている。湿原の周囲には、ニホンジカの侵入防止のため金網が張り巡らされている。出入り口の鉄の扉を自分たちで開け閉めして中に入る。
ガスってはいるが、緑一色の中に木道が延び、レンゲツツジの朱やアヤメの青紫が鮮やかだ。さほど広くはないものの、「天空の花園」「花の宝庫」と呼ぶだけあって、山野草の種類は豊富だ。
この時季の売りは、100万本といわれる日本スズラン。湿原からゴンドラ山頂駅に向かって坂道を上って行くと、左右に白く小さな鈴のような花を幾つも付けたスズランが群生している。

湿原内の散策を楽しんだ後、山頂直下の登山口・御所平へ。「花畑」と呼ぶスキーゲレンデのような草原の中の表登山道を登る。背丈近くまで伸びたヤナギランが咲く頃もよさそうだ。
やがて登山道は二手に分かれる。右の岩場コースを上り、左の迂回(うかい)コースを下ることにする。雨にぬれた岩場は滑りやすく注意が必要だったが、30分ほどで頂上に。
樹木が一本もない、はげ山のような頂は晴れていれば間近に八ケ岳のパノラマが広がり、富士山をはじめ、南ア、中ア、北アの三つのアルプスが望める。
だが、この日は降りしきる雨と霧で何も見えない。山名標柱の脇にある全方位の展望案内盤が恨めしかった。
長居は無用のため、10分ほど山頂にいただけで下山。雨宿りを兼ねて麓の山荘の食堂に入り、ホットミルクや山菜うどんを注文して昼食に。食事後、山荘前の庭で大切に育てている希少種の釜無ホテイアツモリソウやキバナアツモリソウの花を見せてもらう。

上りと同じコースを沢入登山口まで下る。帰路は諏訪湖サービスエリアの温泉につかり、雨で冷え切った体を温めた。
(横前公行)
(2020年7月25日掲載)
写真上=山野草が豊富な入笠湿原
写真中=群生地として知られるスズラン
写真下=「幻の花」といわれる釜無ホテイアツモリソウ