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2020年夏02 オオカワヂシャ ~繁殖力旺盛 拡大気掛かり

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 小布施橋の千曲川左岸一帯の河川敷に広がる果樹畑。昨年秋の台風で冠水し、排土作業が進む。5月下旬、一角の空き地に、オオカワヂシャが成長し、一面に繁茂していた。氾濫水により種が運ばれたと思われる。

 残土は高さ50センチ前後、広さは約500平方メートル。ひび割れができた表土に高さ50~60センチほどの株が千株以上はあるだろうか。オオイヌノフグリに似た空色の径5ミリほどの小さな花を付け、にぎやかだ。

 ゴマノハグサ科の越年草。欧州からアジア北部原産の外来種で、日本では1920年代、神奈川県で採集されている。野生化し、関東以西のほか、新潟県や千葉県、東京都などにも分布を広げてきた。県内は2007年、千曲市の千曲川で発見されたのが最初の正式な記録とされる。

 根茎や種で増え、繁殖力が旺盛。日本の生態系に悪影響を及ぼすとし、国は特定外来生物に指定している。県環境保全研究所は07年から09年にかけ、県内の主要河川をくまなく調査。千曲川や犀川流域で多く確認し、天竜川、千曲川上流域は少なく、木曽川では確認されなかった。

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 北信では10年5月、長野市丹波島の犀川で自然保護団体らが駆除作業を初めて実施。その後、気に留めていなかったが、今年5月中旬、自宅(石渡)脇を流れる用水路で背丈ほどもあるオオカワヂシャの開花株を発見。一帯の用水路を調べてみると、大小20~30株以上確認できた。

 身近な所での発見に驚いたが、念のため近辺の千曲川に架かる橋周辺も調べてみた。立ケ花橋の上下流の畑や堤防下、落合橋の千曲川河川敷内の球場、屋島橋上流の湾土(わんど)の水辺などで確認。いずれも氾濫水で運ばれた土砂が堆積した裸地だった。

 「種子形成前の抜き取りが重要」。同研究所が08年以来提唱する効果的な駆除方法だが、結実した膨大な種を見ると今後が気掛かりだ。

(2020年7月4日掲載)

写真上=茎からいくつもの花穂を出すオオカワヂシャ。開花、結実し、こぼれた種が分布を広げる=5月30日、小布施橋の千曲川左岸の河川敷
写真左=大人の背丈ほどに成長したオオカワヂシャ。撮影後駆除された=5月15日、長野市石渡の用水路
 
北信濃の動植物