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2020年夏 05 ヤマトキソウ トキソウ ~淡い紅色 野鳥トキの羽の色

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 長野市郊外の山麓の湿地や里山で、雨をたっぷりと浴びたトキソウ、ヤマトキソウがかれんな花を咲かせている。

 ともにラン科トキソウ属の多年草で北海道から九州に分布。長野県では、トキソウはほぼ全県に分布し低山帯の日当たりの良い湿地に生育。ヤマトキソウは中信から北信の、低山帯から亜高山帯の湿り気のある草地と場所は限定される。

 トキソウは高さ20~40センチ、花は長さ2~2・5センチで横向きに半開、ヤマトキソウは高さ10~25センチ、直立した1~1・5センチの花はほとんど開かない(県植物誌)。

 6月末、緩やかな斜面の草原の中にある湿地帯にトキソウを探索。地面が見え隠れし水がたまるような場所に2群落、合計30株ほどが点在していた。2008年、植物文化研究家永井茂富さん(73)は一帯の植物相を調査。報告書に「約500種の中にトキソウを含む6種の希少種も」とあり、これまで紡いできた命に出合えたことに感激した。

 一方のヤマトキソウ。里山の山頂付近、林縁の明るい草地に20株弱が上向きの小花を咲かせていた。一帯の散策コース整備や植物群落を保護している地元のトレッキングコース愛護会の小林勇会長(73)は、「見つけたのは数年前。ほかの群生地を合わせてもせいぜい50株ほど」と数が極小の希少種だ。

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 野鳥のトキの羽の色に由来し、花の色は淡い紅色で人気だ。県版レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類、IB類にランク。トキソウは、県の希少野生動植物保護条例の指定種で、採取や捕獲などには知事への届け出を必要としている。

 トキソウの撮影を終え、腰を降ろすと、草むらに20×30センチほどの深く掘られたばかりの穴を発見。トキソウの採取跡ではないことを念じつつ、湿地を後にした。
(2020年7月25日掲載)


写真上=長さ1センチほどの直立したヤマトキソウの花。ほとんど開かない=長野市の里山で7月初め撮影

写真下=草原の湿地で花を横向きに咲かせたトキソウ=長野市郊外で6月末撮影
 
北信濃の動植物