
足元の多様な雑草に驚き
案内人独自の視点で長野の町の新しい魅力を発見する「ながの門前まちあるき」。今回(7月17日)は「まちの植物図鑑~夏~」がテーマ。案内人の信大教育学部教授・井田秀行さん(52)(植物生態学)は出発式で、「街路樹や花壇の下にある目立たない草に注目したい」。街なかの雑草に目を向けて歩こうという趣旨だ。
初めに訪れたのは、ぱてぃお大門。白壁の建物の陰にある植え込みには、よく見ると植えられた植物のほかに雑草もちらほら。ゲンノショウコ、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ。井田さんの解説で、よく見る雑草の名前を初めて知った。
中央通りに出ると、歩道の植え込みにノゲシ、ヤブガラシ、カヤツリグサ、エノキグサなど。多くの種類の雑草が生えていることに驚かされる。小さな草ばかりでなく、キリやクワなどの幼木が身近な場所に生えているのも意外だった。
知り始めると、雑草を探すのが楽しい。井田さんと参加者の合わせて13人が皆、うつむいて足元の草を見ながら路地を歩く。街を行く人には、一風変わった集団に見えただろう。
この日の参加者は植物好きの女性たちで、草花に興味津々。「これは外来種?」「花の季節は?」「どんな花が咲くの?」「食べられるんじゃない?」―井田さんに質問したり、参加者同士で情報交換したりしながら進む。

ペラペラヨメナ、ギシギシといった植物名の面白さも話題に。ハキダメギク、ヘクソカズラなどには、「雑草はひどい名前を付けられて、かわいそうだよね」。イヌワラビ、イヌタデなど植物名の「イヌ」については、井田さんが「そうではない、という意味」と説明した。
アスファルトの間から生えるオオバコ。井田さんによると、茎を絡めて引っ張り合うオオバコずもうを知るのは、今の学生の中では10人に3人。「私が教えてあげるんですよ」
大門周辺から長門町の長野天神社、さらに旭町のひまわり公園まで、2時間のまち歩きで見つけた植物は全部で56種類。イモカタバミやコヌカグサなどの外来種、マツバギクやムラサキツユクサなど園芸種が雑草化したものも意外に多かった。
井田さんは最後に、「都市部の足元にも多様な自然がある。遊んだ思い出や食べられることなど、雑草の文化を子どもたちに伝えていって」と参加した人たちに呼び掛けた。
(2020年8月8日掲載)
写真=中央通り歩道の植栽に生える雑草を調べる井田さん(右から2人目)と参加者たち