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2020夏06 ガビチョウ ~鳴き声にぎやか でも姿は見えず

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 「薄暗い林でにぎやかにさえずり続ける鳥が2羽。でも姿は見えない」。6月下旬、オオムラサキの継続観察で長野市松代町の尼厳(あまかざり)山の山麓を訪れた友人の花崎秀紀さんから連絡が入った。

 早速足を運んだ。鳴き声から「ガビチョウ」と確信したが、やぶの鳥といわれる通り、姿を人前に現さない。声を頼りに右往左往、とうとう葉の陰でさえずる姿をカメラに捉えることができた。

 チメドリ科で全長20~25センチ、色は焦げ茶色。中国南部から台湾、東南アジア原産。美しい鳴き声から中国では古くから飼育され、日本には江戸時代に輸入とされる。逃げたり、放出されたりして野生化。1980年代に北九州で生息が確認。以後関東や西日本、九州で分布を拡大している。

 動物社会学・行動生態学が専門で、「見る聞くわかる野鳥界(識別編・生態編)」(信濃毎日新聞社刊)の著者石塚徹さん(55)=軽井沢町=によると、県内では2003年、野辺山で初めて発見。その後、佐久地域で急速に分布を広げ、12年には長野市まで達したという。

 これまでに上田市や須坂市、木島平村などでの断片的な確認情報を耳にするが、石塚さんは「標高1200メートル以下の県内全域の里山で普通に繁殖している」。地上の餌を採食するため多雪地にはすめないが、北信で足止めをくいながらもまだ増えている段階とみる。

 山裾のやぶを好み、メジロやホオジロ、ヒヨドリなどの在来種と餌や営巣場所などを巡って競合。国は、ソウシチョウ(1月11日付掲載)とともに特定外来生物に指定。輸入や放出、飼育などを規制している。

 石塚さんは「駆除はほぼ不可能。セイヨウタンポポやヒメジョオンのように、新しい生態系としてバランスがとれてしまう可能性が大きい」とみている。

(2020年8月1日掲載)

写真=山里のやぶの中でにぎやかにさえずるガビチョウ。目の周りの白い模様が特徴=松代町で6月26日撮影
 
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