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2020年夏07 ヒメボタル ~足元や背後でも 山中に幻想の光

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 長野市の七二会と戸隠の境、地蔵峠(1143メートル)。陣場平山や萩野城跡などへのトレッキングコースの起点で、峠一帯にヒメボタルが生息する。「少なくとも30年以上前からいる」と近くに住む男性(72)は証言する。

 発生時期になると、連日足を運び、状況を観察、記録し、見学者の安全を見守る七二会地区活性化推進員の水口敏弘さん(63)からの情報を基に7月19日、10年ぶりに再訪した。まだ明るい18時半、すでに撮影目的の数人が場所取りをして待機していた。

 辺りが暗闇に包まれた19時半過ぎ、道路沿いの谷側斜面、杉林の下の草むらでチカッ、チカッと光り始めた。呼応するように光はみるみる増え、数えきれないほどに。すぐ足元や背後でもヒメボタルが乱舞。幻想の世界に浸りながらシャッターを切った。

 ヒメボタルは体長6~9ミリ。ゲンジボタルより小さく、昔から「山ボタル」とも呼ばれ、一生を山中で過ごす陸生のホタル。ふ化した幼虫は主に陸生の巻き貝を食べて成長し、翌年の夏に成虫になり発生、交尾、産卵し一生を終える。この雌雄の出会い、求め合うシグナルが光の一大ショーで、時期は7月下旬の約10日間、ピークは2、3日と短い。

 雌は羽が退化して飛べず、雄の飛翔も範囲が狭く生息場所は限られる。北信ではほかに戸隠高原や千曲市の冠着山、山ノ内町などに生息し、県版レッドリストでは準絶滅危惧種にランクする希少種だ。

 「地元の自然を多くの人に楽しんでほしい」と、七二会地区では、地域活性化委員会の里山整備プロジェクトを中心に10年前から草刈りなど生育地周辺を整備し、5年前から観賞会も開いている。水口さんは、暗闇の中の見学や撮影に「照明などマナーを守り、危険のない行動を」と呼び掛けている。

写真=ヒメボタルの発光間隔は0.6~1秒。ゲンジボタルの約2~4秒に比べ短いため、飛翔する光跡は点のように写り込む=七二会の地蔵峠で7月19日21時35分から10分30秒間露光
 
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