
奥信濃、栄村。近くに集落のある低標高のブナ林に、初夏になるとブッポウソウが渡ってくる。
本州、四国、九州に南方から渡来、繁殖する夏鳥。体長約30センチで、セミやトンボなど飛翔昆虫を捕食。瑠璃色の胴体、翼に水色の斑紋、黒褐色の頭部、赤いくちばしなどが美しく「森の宝石」の異名も。県内ではほかに、県南の天龍村や中川村などが知られるが数は少なく、県の天然記念物、県版レッドリストでは絶滅危惧IA類、県特別指定希少野生動物。手厚く保護されている。
栄村での生息が明らかになったのは1983年。当時信大教育学部生態研究室の中村浩志名誉教授(73)らが、1羽のひなを拾ったことがきっかけだった。88年、同研究室は巣箱による繁殖に成功。90年には地元の中学生や村民らが巣箱を20個ほど作りブナ林内に設置。翌年には村の鳥に指定し、村民挙げての保護、回復活動を始めた。
20年以上前から活動に関わる村誌編纂室の保坂順一さん(63)によると、繁殖数は、2000年代に半減し、10つがい前後で推移。10年ごろに巣箱を五十数個に増やしたところ、12年から14つがいに。しかし、17年から2年続きで一つずつ減っているという。
保坂さんは、「カラ類やムササビなどに加え、数年前からオシドリが増えてきた」とし、巣箱の半数近くがほかの動物に利用されてしまうためと分析。2000年ごろからアマチュアカメラマンが増え始めたことも心配してきた。5年ほど前には、複数のつがいが集まっていた場所にカメラの放列が見られ、林内で長時間居座る姿も。
「ブッポウソウは警戒心が強く、繁殖に影響する」とし、村は昨年、注意喚起する看板を立てた。保坂さんは、「確実に姿を消した林も。一帯は今期、半減しているのでは...」と憂慮している。
(2020年8月22日掲載)
写真=巣箱内のひなに餌を運び飛び立つブッポウソウ=栄村で許可を得てリモコン遠隔操作で7月27日撮影