
長かった梅雨が明けるのを待って8月上旬、八ケ岳の硫黄岳(2760メートル)に登った。すさまじい爆裂火口跡に息をのみ、山頂では眼前に広がる主峰・赤岳(2899メートル)などのパノラマを楽しんだ。
山仲間4人で7時に長野市内を出発。上信越道、長野道、中央道を走り、諏訪インターで降りる。天気は曇り。目指す八ケ岳はガスに隠れて見えない。
茅野の市街地を抜け、蓼科高原の別荘地の先から登山口の桜平へ。新しく造成された二つの駐車場は早くも満杯。コロナ禍のさなかというのに首都圏からの車が目立つ。空きスペースを見つけて駐車。9時40分に歩き始める。
10分ほど進むと、車止めのゲートに。この左手の先に以前からの駐車場があるが、むろん満車のようだ。
ゲートから、音を立てて流れる渓流沿いの登山道を歩く。水量豊かな小さな滝が幾つもあり、一面に続く緑のコケがきれいだ。木漏れ日が当たると一層鮮やかさを増す。

沢に架かる橋を渡ると夏沢鉱泉だ。中をのぞくと、女性従業員から「マスクをして入ってください」と注意された。新型コロナ対策でピリピリしている。
小休止の後、再び渓流沿いの道を歩く。間もなく左手に高さ20メートルほどの崩落地が現れ、う回路を進む。青森県の奥入瀬(おいらせ)渓谷を連想させるような道を登って行くと、オーレン小屋に。
休憩する登山客でにぎわっている。ここで大休止。小屋の脇にはミツバオウレンの小さな白い花がいっぱい咲いていた。
オーレン小屋から登山道は三つに分かれる。直進し、細いシラビソが密生している林の中を20分ほど歩くと夏沢峠に。二つある山小屋の間を抜け、少し先で休憩。ここからは露天風呂で知られる本沢温泉へ下る道がある。
樹林の中をしばらく登るとハイマツ帯に変わり、間もなく石ころだらけの道になる。前方に点々と7基のケルンが見える。濃霧の時の道しるべと、左側の爆裂火口跡への転落を防ぐ目印のようだ。

佐久側に大きく崩れ落ちた赤茶色の火口壁は大迫力だ。888(仁和4)年の大爆発で押し出した溶岩流が千曲川をせき止め、大きな湖ができたと伝えられている。小海、海ノ口、海尻などの地名はその名残という。
13時40分ごろ、山頂に到着。南側に横岳、赤岳、中岳、阿弥陀岳のパノラマが広がる。最高峰の赤岳は頭が雲に隠れていたが、近くの横岳は垂直に近い大同心の岩壁もよく見える。主峰群の眺めを楽しみながら昼食を取り、30分ほどで下山へ。
西側の赤岩の頭(かしら)手前の分岐からオーレン小屋へ下る。小屋の前のベンチで一休みし、往路と同じ道を、夏沢鉱泉をへて桜平へ。満杯だった駐車場は3分の1ほどの車が残っていいただけだった。
(横前公行)
(2020年8月22日掲載)
写真上=荒々しい姿を見せる爆裂火口壁
写真下=山頂から眼前に広がる主峰群(左から横岳、赤岳、阿弥陀岳)