15 解釈レベル理論 ~心理的距離で異なる判断

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 マリッジブルーは、結婚を間近に控えて、不安や憂鬱を感じる心理状態です。新しい生活への不安や、結婚準備に伴う疲れやストレスが原因と言われています。行動経済学では、別の理由もあると考えます。「解釈レベル理論」による心理です。

 人は、出来事、ものや人に対して、それらが心理的に遠い場合は抽象的に捉え、逆に近い場合には具体的に捉えるのです。結婚の場合、婚約の時点では愛する伴侶を得た喜びなど感情面が大半を占めています。対象との心理的距離が遠い頃は、現実はよく見えていません。

 ところが結婚が近づくにつれ、具体的に考えることが増えます。結婚式の費用を捻出し、招待客を決め、住まいや家具を手配しなければなりません。新しく身内となる親族の中に、気の合わない人がいることもあります。こうした現実に直面するにつれ、ブルーになっていくのです。

 解釈レベル理論は、時間だけでなく、空間や親しさなどで心理的距離が異なる場合にも当てはまります。例えば禁煙を決めた翌日、いらつく出来事があり、つい目の前のたばこを吸ってしまうケースです。心理的距離が遠く禁煙できるともくろんでいた前日の自分と、当日、たばこの誘惑に直面した自分の心理状態は別人のように違うのです。

 実はここには重要なことが示されています。人は心理的な距離が異なるものに対して、公正な比較や判断をすることが苦手なのです。

 例えば田舎に住み、都会居住者をうらやむ人がいたとします。実は、この人は、心理的距離が遠いところから都会暮らしを思い描いているため、自分が経験してきた田舎暮らしほどには都会暮らしを正しく評価できていない可能性があるのです。

 「隣の芝生は青く見える」という言葉は、行動経済学によって学問的に裏付けられています。皆さんも「解釈レベル理論」を念頭に、不合理な判断は避け、無意味な優越感や劣等感を持たないことをおすすめします。
(マーケティングコンサルタント)
(2020年9月26日号掲載)