164 腹痛 ~怖い病気が隠れていることも

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 今回のテーマは腹痛です。どのような症状の場合に医療機関を受診するべきか、判断のポイントを紹介します。

内臓痛と体性痛

 ほとんどの病気で、痛みの原因となる刺激は臓器の内側に生じ、病気の進行とともにその周囲にまで広がります。初期段階の痛みを内臓痛、広がった段階の痛みを体性痛と呼びます。

 内臓痛は、鈍く押されるような痛みが特徴です。痛みには波があり、痛む場所は漠然としています。胃腸炎でおなかがグルグルする感じを思い浮かべてください。

 この段階で慌てる必要はなく、夜間に症状が続いたとしても日中に受診すれば十分でしょう。ただ、がんも初めはこうした痛みが主体となるため、長く続くならかかりつけ医に相談してください。

 一方、体性痛になると、痛みはより鋭く強くなります。痛みは数時間にわたって続き、痛む場所もはっきりと指させることがほとんどです。体を動かすと痛みが響き、逆に体を丸めると楽になります。いわゆる腹膜炎のイメージです。

 早めに受診した方がいいのはもちろんですが、特に「突然」「強い痛み」が表れ、「長時間続いて」「時間とともに悪化」する場合は要注意です。消化管穿孔(せんこう)や重要臓器の虚血・破裂といった緊急症の可能性が高く、救急搬送の必要があります。

顔色や脈をチェック

 内臓痛と体性痛のどちらともいえない痛みの場合は、痛みに付随する所見が重要です。

 まず顔色を確かめ、息苦しさや脈の乱れがないかを確認してください。痛みが比較的穏やかな場合でも、顔色の異常や脈の乱れがあれば消化管出血、息苦しさが目立つようなら狭心症や心筋梗塞などの怖い病気が隠れていることがあります。持病がある人は、早めに医療機関を受診してください。

 発熱やおなかの張り、硬さが目立つ人、短時間のうちにおなかの痛み方が変化する人も、我慢は禁物です。症状の強さによっては、救急受診をためらうべきではありません。

 休日夜間の救急外来を受診するべきかが判断できないときは、お近くの緊急医の電話相談を活用してください。その際は、持病や出されている薬のほかに、痛みの特徴(いつから・どこに・どのような痛みが出たか、飲酒などのきっかけはあるか、だんだん悪化してきていないか、痛みに伴うほかの異常はないか)をメモしてから電話すると、対応がスムーズです。ご協力をお願いします。
(2020年9月12日掲載)

写真=北畠  央之=消化器内科科長=専門は消化器一般、内視鏡

 
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