
以前より目が開けづらくなった、まぶたが垂れ下がって視野が狭くなった、眠たそうな目つきに変わった―などの症状がある人は、(眼)(がん)(瞼)(けん)下垂症かもしれません。
眼瞼とはまぶたのことで、眼瞼下垂症とは、まぶたが上がらなくなる病気です。
顔の老化の原因にも
原因は多くの場合、上まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)が引き伸ばされたり、筋肉の付着部が緩んだりすることです。加齢によって誰でも多少はまぶたが下がってきますが、花粉症やアトピー性皮膚炎などで目をよくこする癖のある人や、コンタクトレンズを長期間使用している人には、このような「腱膜性眼瞼下垂症」が多く見られます。
症状が進行すると、おでこの筋肉を使って目を開こうとするために眉の位置が上がり、おでこのしわが増えます。上まぶたが落ちくぼんだり、左右の目の大きさに違いが生じたりすることもあります。これらは、顔の老化現象の一つです。慢性的に目の周りの筋肉を使うようになることで、眼精疲労、頭痛、肩凝りも引き起こします。
1泊手術で治療
腱膜性眼瞼下垂症は自然に回復することはないため、まぶたを上げる手術で治療します。日常生活に支障があり、手術で改善が見込まれる場合は、健康保険で手術ができます。
手術は通常、局所麻酔で行い、上まぶたを切開します。当院では、外れたり緩んだりしてしまった挙筋腱膜を正常な位置に縫合し直すのに加えて、たるんだ分の皮膚を切除します。手術時間は1時間から1時間半程度で、1泊の入院が必要です。
手術後はまぶたが簡単に開けられるようになり、まぶたが二重(ふたえ)になります。個人差はありますが、手術後2週間程度で高度な腫れや内出血は引いてきます。完全に傷跡が落ち着くまでは半年程度かかります。
時間の経過とともに自然なまぶたになっていきますが、目元の変化で顔の印象が変わることが多いため、担当の医師とよく相談し、納得した上で治療を受けることが大切です。
眼瞼下垂症にはほかに、生まれつきまぶたを上げる筋肉の発達が悪いもの(先天性)、けがで神経や筋肉が損傷することで起こるもの(外傷性)、重症筋無力症や筋ジストロフィーなどほかの病気の一症状として現れるものなどもあります。これらは腱膜性眼瞼下垂症と治療法が異なるため、よく見極める必要があります。
横山 俊一郎=形成外科医師、四肢外傷・機能再建センター医師=専門は形成外科
(2020年9月26日号掲載)