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03 火消しの水 ~江戸時代の石積み水路も

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 案内人が独自の視点で街の魅力を紹介する「ながの門前まちあるき」。8月21日は「火消しの水」がテーマ。知られざる門前の消火設備を巡った。

 案内人は、長野市職員の宮川幸憲さん(49)。これまで消防局に通算7年間勤務し、消防団員でもある。男性中心に9人の参加者と共に炎天下を歩いた。

 普段意識することもなかった、街角の赤い消火栓。「どう使うか知らない人も多いでしょう」と宮川さん。「災害時、自分で水を出さなければならなくなったときに参考にして」と仕組みを教えてくれた。消火栓は誰でも使っていいのだという。消防隊や消防団以外の人が触れてはいけないと思い込んでいた。

 中央通りや長野駅東口などには、景観に配慮したステンレス製の消火栓も増えている。あれが消火栓だということも初めて知った。

 意識しながら歩くと、道路には地下式消火栓もある。マンホールのふたに消防車や「まとい」の絵が描かれていたり、「消防」の文字が入っていたりする。地上式消火栓を設置する場所がない場合に造られ、道路下の水道管に直接つながっているという。ふたを開けるとホースの口があり、つないで水を出す。

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 善光寺駒返り橋前には、長野市街地で唯一という道路下の防火水槽。北側にある大勧進の「放生池」の水を引き込み、約40立方メートルの水が入っているそうだ。

 西之門通りを下ると、西之門よしのや前とその周辺に善光寺町防火水路がある。善光寺を火災から守るために江戸時代に造られた幅90センチの石積みの水路。火事が起きると湯福川の水を流し、畳や戸を差し込んで水をせき止め、くみ出したという。

 そのまま旭町の中央消防署まで歩く。県勤労者福祉センターの跡地に3年前に移転新築し、まだ真新しい。

 ここでは署員の案内で見学。新型コロナウイルス感染予防のため、県内消防署初の屋内訓練場を見ることはできなかったが、消防車両を間近に見ながら仕組みや役割を学んだ。水を積んで現場に行く車両は少なく、消火栓や防火水槽から引いてポンプで放水するのが消防車の役割だと学んだ。

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 ポンプ車からの放水も体験。水の威力で体が後ろへ持っていかれそうになった。火事場ではこれが消火まで数十分間続く。消防士の過酷さを知った。

 宮川さんは「消火設備は、使われないことが一番。でも、いざというときにきちんと使えなければならない。もし身近な消火栓が雑草に埋もれていたら、きれいにしてあげて」と結んだ。
(竹内大介)
(2020年9月12日掲載)

9月のながの門前まちあるき

 (1)9月18日(金)15:00~17:00、「門前の鬼無里」。案内人は長野市職員の羽田稔さん。
 (2)19日(土)15:00~17:00、「西鶴賀、空き長屋調査隊」。案内人は建築士の久米えみさん。
 定員は各10人。参加費1000円(学生500円)。
 (申)(問)まちくらしたてもの案内所(電)090・1553・1485



写真上=街角の消火栓について説明する宮川さん(中央)

写真中=道路下に防火水槽がある。建物は大勧進

写真下=西之門よしのやの軒下にある防火水路