
9月18日のテーマは「門前の鬼無里」。善光寺門前にある鬼無里ゆかりの場所を巡った。案内人は長野市職員の羽田稔さん(50)。4年前、鬼無里支所勤務になったことをきっかけに、家族で市街地から鬼無里へ移住したという鬼無里ファンだ。
初めに訪れたのは大門町の八幡屋礒五郎本店。七味唐辛子の老舗のルーツは、鬼無里だ。参加者は室賀豊社長の話を聞いた。
室賀さんは上田を本拠とした豪族室賀氏の末裔。戦国時代に鬼無里に逃げ延び、土着してから16代目という。八幡屋の初代勘右衛門は1736年、「(鬼無里特産の)麻の実が使える」と、江戸で普及しつつあった七味唐辛子を作り、善光寺の堂庭(境内)で創業した。
鬼無里と善光寺門前の関係が深いのは、仁王門から西へ鬼無里への道が延びているから。江戸時代初めから、道沿いの桜枝町に鬼無里産の麻や紙が集まり売買された。八幡屋の七味も、この道があったから生まれたのだ。

その仁王門の脇には石柱がある。「日本百景裾花峡 入口迄従是西(いりぐちよりこれよりにし)十八丁」。1927(昭和2)年、裾花峡(渓谷)が日本百景に選ばれて建てられた。十八丁は2キロ弱。仁王門からだと西長野の街並みが切れる辺りで、まさに鬼無里へ至る裾花渓谷の入り口だ。
善光寺仲見世には5月、鬼無里に本店があるおやき店「いろは堂」の店舗が開店した。ここでは従業員の話を聞く。いろは堂は大正期に小川村で創業し、戦後鬼無里に移転。初めは和菓子やパンの店で、その経験から生まれたのが独自のおやき製法だという。皮にそば粉とイーストを入れ、油で揚げた後にオーブンで焼く。もっちりとやわらかいおやきにはファンが多い。
西之門町の交差点角にある白い建物「西の門ホワイトハウス」は、元歯科医院の建物を2018年にリノベーションしてできたシェアオフィス。ここで仕事をするグラフィックデザイナーの高城晃さん(45)は、鬼無里の観光ポスターのイラストとデザインを手掛けている。高城さんは「昔ながらの生活をそのまま残す鬼無里の良さを伝えたい」と話した。

一行は西鶴賀町まで歩き、鬼無里育ちの主人が営む「おでん家ひろびろ」で乾杯。羽田さんは「鬼無里と善光寺門前は昔からつながりがあり、今も新しい交流が生まれている。ぜひ皆さんも鬼無里を訪れて」と結んだ。
(竹内大介)
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10月のながの門前まちあるき
(1)10月16日(金)10:00~12:00、「善光寺宿坊通り」。案内人は白蓮坊執事の鈴木健一さん。
(2)17日(土)13:00~15:00、「きもので門前さんぽ」。案内人はたんす屋長野店店長の数藤麻子さん。
定員は各10人。参加費1000円(学生500円)。(申)(問)まちくらしたてもの案内所(電)090・1553・1485
(2020年10月10日号掲載)
写真上=八幡屋礒五郎本店で室賀社長(右)の話を聞く参加者
写真下=仁王門脇にある「日本百景裾花峡」の石柱