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109 岩櫃山 スリルに富む上州の奇峰

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 残暑が続いた9月中旬、群馬県東吾妻町の岩櫃山(いわびつやま)(802メートル)に登った。低山ながら高さ約200メートルの岩壁がそそり立ち、鎖場が続く登りがいのある山だ。

 2016年NHK大河ドラマ「真田丸」の冒頭シーンに毎回、須坂市の米子不動滝との合成映像で登場。中腹の岩櫃城は真田氏の上州の拠点であり、歴史ロマンも秘めている。

 山仲間4人で7時に長野市内を出発。上信越道を上田インターで降り、国道で群馬県嬬恋村へ。途中、路肩工事があり、浅間山方面に大きくう回させられた。

 再び国道に戻り、長野原町を過ぎ東吾妻町のJR吾妻線郷原駅の先を左折し、古谷登山口の駐車場に。間近に仰ぎ見る大岩壁は迫力満点だ。

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 念のためヘルメットをかぶり、9時半過ぎに歩き始める。舗装道路を少し上り、脇に入ると密岩通り登山口に。名前の通り、上部には岩が林立している。

 薄暗い樹林の中で急登が始まる。間もなく最初の鎖場が。木の根を乗り越え、丸太階段を登り詰めると尾根の鞍部(あんぶ)に。

 休憩した後、岩の間を登った所が難所の「天狗(てんぐ)の架け橋」だ。岩の下に大きな穴が開いている。以前はその上を渡っていた。崩壊の危険があるため、今は鎖につかまりながら下のう回路を通る。

 ここを過ぎると、長いはしごを上り、さらに高さ10メートルほどの岩を鎖を使って登る。200メートルほど先にとがった山頂部が見える。上には人の姿が。

 穴の開いた大岩の中をくぐり抜け、右に回り込むと鎖場が続く岩場だ。この辺は大岩壁の最上部に当たる。眼下に吾妻川の流れと箱庭のような町の風景を見下ろす。

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 気を抜かないようにしながら難所を抜ける。最後に高さ20メートルほどの大岩を鎖を使って登りきると山頂部だ。鎖で囲まれた一段高い所に山頂標識と、つかまり立ちするための鉄棒がある。下を見ると目がくらむようだ。

 山頂部からは360度の眺望が広がる。南に妙義山、西に浅間山や四阿山(あずまやさん)、白根山、北には谷川岳と武尊山(ほたかやま)、東に赤城山や榛名山(はるなさん)。名だたる上州の山々が一望できる。

 眼前にそびえる岩峰にも登り、下りは沢通りという谷底の道を進む。土塁や空堀で囲われた岩櫃城の本丸跡で昼食を取り、帰路は沢通りと並行する尾根通りを歩き、赤岩通りを下る。石垣だけが残る潜龍院跡は、織田・徳川軍に攻め込まれ敗走した武田勝頼を迎えるために真田昌幸が建てた御殿跡という。

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 ここから古谷登山口まではわずか。帰路は往路と同じ国道を通り上田経由で戻る予定だったが、八ツ場(やんば)ダム付近で道を間違え草津温泉に入り込んでしまった。仕方なく白根山を越え、万座温泉から高山村に下る大ドライブに。
(横前公行)
(2020年10月10日号掲載)

写真上=麓から仰ぐ大岩壁

写真中=難所の「天狗の架け橋」

写真下=長い鎖を使って登る岩場
 
中高年の山ある記