
10月16日開催のまち歩きのテーマは「善光寺宿坊通り」。宿坊の一つ白蓮坊の執事で善光寺公認案内人の鈴木健一さん(44)が、善光寺の周りにある幾つかの宿坊通りを案内してくれた。
善光寺には天台宗の「院」が25、浄土宗の「坊」が14、計39の宿坊がある。しかし地元長野に住む私たちは、宿坊に泊まったり、宿坊通りを歩いたりする機会が少ないものだ。
まずは表参道。善光寺交差点から仁王門の間には、左手の大本願に向かって、右側に7軒の宿坊が並ぶ。「どの宿坊も善光寺寄りにお堂が、長野駅寄りに宿の部分があります」と鈴木さん。立派な瓦屋根の建物と大きな松などの庭木が趣ある景観をつくっている。
白蓮坊と正智坊の間には細い「羅漢小路」があり、東の「法然通り」へ抜ける。両側に白壁、瓦屋根が美しい12の院坊が並ぶ。北寄りに、浄土宗開祖の法然上人(1133~1212年)が休んだと伝わる法然堂がある。

仁王門より北、仲見世通りの東に南北に走るのは「釈迦堂通り」。天台宗の11の院が並ぶ。中ほどの世尊院のお堂が釈迦堂。本尊の釈迦涅槃像(重要文化財)を参詣する人が多い。釈迦堂の正面は真西へ「地蔵東小路」があり、突き当たりが松屋旅館。善光寺本堂は江戸時代に火災に遭って現在地に移転する前、この場所にあったという。
仲見世通りの西にあるのは「阿闍梨池通り」で、6院が軒を連ねる。明るく広い通りだ。中ほどの本覚院敷地内にある阿闍梨池が由来で、平安時代の僧皇円が竜に化身して善光寺を拝んだ後、この池に入ったという伝説がある。
宿坊は阿闍梨池通りのさらに西にも3軒。これで全ての宿坊通りを巡り終えた。
鈴木さんは仏教文化や善光寺にまつわるうんちく、大本願の鷹司誓玉上人のことなどを分かりやすく軽妙に語り、参加者を飽きさせない。各宿坊の前では「ここのご住職は料理の名人」「こちらは長野マラソンで3時間を切るアスリート」などと紹介。善光寺や僧侶の皆さんを身近に感じることができた。

最後は、鈴木さんが眺望の良さを薦める駒返り橋近くのカフェ「ドレッタ」へ。目の前に大勧進の放生池、山門と参道の景色が広がる2階の特等席でガレットのランチを楽しみ、お開きとなった。
(竹内大介)
(2020年11月7日号掲載)
写真上=石畳敷きの通りに沿って、白壁と瓦屋根の宿坊が並び、美しい(法然通り)
写真下=本覚院敷地内にある阿闍梨池