
「自然気胸」は、肺の表面にできた風船のような袋(「ブラ」と呼びます)が突然破れ、肺から空気が漏れ出てしまう病気です。漏れ出た空気で肺が圧迫されて縮んでしまうと、胸痛や呼吸困難などの症状が現れます。ブラが発生する原因は分かっていませんが、背が高く、痩せ形で、20歳前後の若い男性に多くみられます。
一方、肺気腫、間質性肺炎、肺がんなどの肺疾患が原因で起こる気胸は「続発性気胸」といいます。こちらは中高年の喫煙者に多く、症状や病状が複雑化し、再発しやすい特徴があります。
今回は主に自然気胸の治療について紹介します。
外来通院でドレナージ
軽度の気胸は安静で経過をみることがあります。しかし肺からの空気漏れが多く、肺の圧迫が進行する場合には、「(胸)(きょう)(腔)(くう)ドレナージ」という処置を行います。胸の中に細い管を挿入し、肺を圧迫する空気を抜く治療です。
従来この治療を行う際には入院が必要でした。しかし当院では、小型の携帯型ドレナージ装置を早期に採用し、外来通院しながら治療できるように配慮しています。学生や社会人でも勉強や仕事を続けながら治療できるメリットがあります。
このドレナージで気胸が改善する人もいますが、ブラは残ったままなので再び破れることがあります。再発率は50%程度といわれています。10代の若年者は再発率がさらに高く、その場合には手術を検討することになります。
肺を切らない手術
手術は、胸に1~2センチの小さな穴を3カ所程度開けて、胸腔鏡と呼ばれるカメラを挿入しモニターを見ながら行います。ブラの処理法についてはここ数年で少しずつ変化してきました。以前はブラを含めて正常肺の一部を切除する方法(部分切除)が行われてきました。しかし肺を切除した部位にブラが新生して再発することがあり、問題とされてきました。
この点を解消するため、当院では特殊な電気メスを用いてブラを高熱で焼く方法を採用し、できる限り正常肺を温存することを心掛けています。さらに肺の表面にシートを張って補強する再発予防策を取っています。手術後は3日程度で退院できます。
この手術を過去3年間に49例行い、再発したのは2例のみ(再発率4%)でした。従来の方法だと再発率が10%前後と報告されていますので、肺を切らないこの手術法は体の負担が少なく、有効な治療法と考えています。
境澤 隆夫
呼吸器外科科長、乳腺外科科長=専門は呼吸器