167 人生会議 ~「もしものとき」に備え 周囲と話し合い

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 「人生会議」とは、もしものときに備え、その後も望む人生を送るために、自身が「大切にしている思い」や「好きなこと嫌いなこと」、「希望する(しない)生活や医療・介護」などについて、家族など信頼する人たちと話し合い、その思いを共有する取り組みです。

周囲の決断の助けに

 誰でも、いつでも、命に関わる大きな病気やけがをする可能性があります。命の危険が迫った状態では、約7割の人が医療や介護、その後の生活などについて自分で決めたり望みを伝えたりすることができなくなるといわれています。

 こうした状況になると、家族などが「きっとこう望むだろう」と本人の意向を推察し、その後の医療や介護、生活についてそれぞれの専門職と相談し決めていくことになります。自身の思いを家族などと共有していることが、望みをかなえるための重要な道しるべとなり、代理として決断する人の大きな助けとなるのです。

 「人生会議」は、世代や健康状態、人生の場面によって話す内容や取り組み方が異なります。人の思いや希望は変化していくものであるため、一度きりではなく定期的に話し合うことも大切です。

 「もしものときなど縁起でもない」「そんなことは考えたくない」と思う人は、無理に「人生会議」を行う必要はありません。自身が必要だと感じたときに行うものなのです。

人生を豊かに

 健康なときや若いうちは、もしものときは想像しづらく、考えることが難しいかもしれません。そのような時期には、家族との普段の会話の中で、自身が普段から「大切に思っていること」や「好きなこと嫌いなこと」、望む暮らしを話すことで十分かもしれません。

 健康に不安が生じたとき、人生の最終段階を意識し始めたとき、介護について考える世代になったときには、もしものときをより現実的に考えるようになるでしょう。そのときには家族に加え、かかりつけ医や担当のケアマネジャーなど、医療・介護の専門職にも思いを伝えましょう。彼らはあなたの望みに沿うように、適切な情報提供や専門的な支援を行い、「人生会議」に参加してくれるはずです。

 「人生会議」の目的は、単に何かを決めたり、結論を出したりすることではありません。大切な人と多くのことを話し、思いを共有することで、自分や大切な人の人生を豊かにすることにあります。まずは、自分の「大切にしている思い」を、「思いを託したい人」へ伝えることから始めてみてください。

西本 洋=地域医療連携室入退院支援センター課長補佐(医療ソーシャルワーカー)

(2021年1月9日号掲載)
 
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